NIWA MAGAZINE

  1. exnibition
  2. trip

青の導く場所 vol.1 文/安部 太一

青の導く場所2月3日

 

2月3日、冬の山陰で久しぶりに穏やかに晴れた午前中、
僕は工房でコーヒーを入れながらOASISの”whatever”を聴いている。

 

「僕は自由さ」と歌う、緑の大地に青い空が広がるジャケット写真が印象的な1994年リリースのシングル。

 

当時、立川に住んでいた19歳の僕は、OASISのファーストアルバムを買いに出掛けたはずなのに、隣に並んでいた、緑の大地に広がる青い空のそのCDジャケットに気持ちを引き寄せられて、ちょっと迷ったけれど結局、視聴もせずにシングルの”whatever”のほうを買った。

そして20代、擦り切れるくらい聴くことになる。

 

僕は今、生まれ育った島根に戻り、うつわを作って暮らしている。あの頃ほど馬鹿みたいに音楽を聴かなくなったけれど、それでも昔聴いた曲をふとまた聴いてみようかなと思う、そういう周期というかタイミングみたいなのが僕には何年かに一度やってくる。

 

時間を置いて新鮮な気持ちで聴く曲を今の自分はどんなふうに感じるのか。エレキギターの音が大き過ぎるし、アレンジは今の好みじゃないな…

でもやっぱり良い曲だ。魅力的な空気感もある。

(もちろん僕はそう感じるということ)

 

聴き方はリアルタイムで聴いていた頃とは同じではなく、客観的で、分析的で、それはものを作る側の視点。

 

夢中で聴いたこの曲の何が好きだったのだろう、何が胸に響いていたのだろう。

 

僕はこんなふうに自分の内面を映し出すような作業が好きで、音楽以外にも小説や絵や風景を、同じように時間を置いて(できればすっかり忘れたい)、また聴いたり見たりを繰り返す。そんなことを最近はますます、意識して続けている。

 

そうしてるうちに自分自身の本質が向かうべき、ある意味では抗えない、方向性のようなものが見えてくる。19歳の青年の意識の上層には上がって来なかった、潜在意識の中にそっと佇んでいる、もうひとりの僕。

 

気まぐれな風に運ばれてきたような、ある日の偶然に導かれて、ゆらりゆらりと、僕はもうひとりの僕に向き合い、今日も仕事する。

 
 

安部太一(陶芸家)

1975年 島根県生まれ
2001年 陶芸をはじめる(父・安部宏に師事)
2006年 個展等、活動をはじめる
2010年 独立、現在は島根県松江市にて制作
http://taop410.com/