NIWA MAGAZINE

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森脇家言行録—頬を寄せ合うvol.2 「会話」 文・森脇智美

 

 

 

私が「はな」と言って小さな鼻をさわると
目の前の娘が小さな指を自分の鼻のあたりにもっていく。
私が「ゆび」と言って、娘の小さな指に触れると
娘が自分の右の指で左手の指をさわり、見つめている。
そしてまた自分の指で鼻をさし、
「は、な」と言ってくれと、「あー」とか「うー」とか声を出す。
私が言葉を発すると娘に表情が生まれる。
一度ではない。
娘は何度も何度も同じことを繰り返す。
さっき耳にした言葉を言ってくれと、必死に私の目を見る。
それに応えてやると、娘は笑う。
子どもに誤魔化しは利かない。
いつでも本気の気持ちを要求している。
自分に注がれる声と目線と時間と空気と触れ合いと温もりと、
全てに包まれていたいのだと思う。

 

じっと顔を見る。
じっと私の口元を見て、
母から発せられる言葉を体内に入れようと
真っ直ぐに見つめる。
母の声を呑み込むように
母の音を吸い込むように
母の響きを確かめるように
真直ぐの目で私を見上げる。
目の前に居る大切な人が自分に真直ぐ向いてくれているかどうか
1歳になったばかりの娘は知っている。
相手が居るから自分がいる。
呼んでは応え、呼んでは応え、
その間、気持ちをやり取りすることが喜びになる。
自分が居て相手が居る。
出した気持ちを受け止めてくれる人がいる。
耳に入ってくる心地よい音がある。
会話の始まりなのだと、ふと感じた。

 

 

森脇智美

広島県広島市生まれ。
中学二年生の頃から絵や言葉を書きはじめる。
広島、大阪、東京、小樽、札幌などで個展を開催し作品集を二冊発行。
陶芸家 森脇靖と結婚し島根県邑南町に住む。
森脇靖と共に歩み、二人の息子、娘と向き合いながら
日々感じる物事を言葉にする。

 

「私にとって言葉を書くということは日常です。
日々感じたこと、疑問、不安、喜び、
その瞬間に生まれ、瞬く間に消えてしまいそうな感情を
書き記すことを続けています。
気持ちに正しいことも間違えもありません。
自身の環境や年齢、読んだ本、人との出会い、家族、
様々なことを通して心が動いた時に、言葉として外に出しています。
私の言葉は、作品でも仕事でもなく、
ライフワークとしてずっと続けていきたいことです。」

 

森脇家言行録(http://maru.morisei.net/