NIWA MAGAZINE

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森脇家言行録 vol.1  頬を寄せ合う 文・森脇智美

 

 

この小さい手で何を求めるのか。
この小さい瞳で何を見ているのか。
この小さい耳で何を聞こうとするのか。
この小さい足でどこへ駈けていくのか。

 

君はとても小さいけれど
その体から溢れてくるものの可能性は無限にある。
いつだって真っ直ぐに生きている。

 

母の頬に顔を近づけ、母の胸に耳をあて、
丸くなって母に抱かれている。
どんなに小さくても母の匂いや声をたよりに近づいて
どこにいても母の存在を探している。
母の名前を叫び、両手を広げて母に抱きついてくれる。
母の胸に顔をうずめ、悲しい時も悔しい時も痛い時も
どんな時だって、母の体温を感じようとしている。

 

大人は外観ばかり大きく、純粋な気持ちは減少していく。
嘘や見栄を張ることが上手になり、
自分を大きく見せようとする術を得る。
背も伸び、手も大きくなり、見るもの聞くものも増えるが、
情報や体裁や周囲の視線に惑わされ、
本当に見なければいけないものに蓋をする。
見えている振りをして、知っている振りをする。
難しい言葉でごまかすのが上手くなる。
人のせいにするのが上手くなる。
誰かのためにしている、という便利な表現で自己中心的に過ごしている。

 

子供は真っ直ぐに生きている。
親の都合も大人の嘘も分かっている。
大切な人に愛してほしいという感情を素直にぶつけ、
それを常に求めている。
子供を育てているのは自分ではない。
むしろ私を育ててくれるのが、子供である。
小さいかもしれないが、全身が命の塊である。
共に過ごし、抱きしめれば抱きしめるほど私の心は熱くなる。
固く壁のようになった殻が身体から剥がされていくようだ。

 

この小さな手で母にしがみつき、
母の胸に飛び込んできてくれるうちは、
私も抱きしめ、頬を寄せ合いたいと思う。
毎日、毎時間、どんな時でも子の名前を呼びたい。

 

 

 

 

森脇智美

広島県広島市生まれ。
中学二年生の頃から絵や言葉を書きはじめる。
広島、大阪、東京、小樽、札幌などで個展を開催し作品集を二冊発行。
陶芸家 森脇靖と結婚し島根県邑南町に住む。
森脇靖と共に歩み、二人の息子と向き合いながら
日々感じる物事を言葉にする。

 

「私にとって言葉を書くということは日常です。
日々感じたこと、疑問、不安、喜び、
その瞬間に生まれ、瞬く間に消えてしまいそうな感情を
書き記すことを続けています。
気持ちに正しいことも間違えもありません。
自身の環境や年齢、読んだ本、人との出会い、家族、
様々なことを通して心が動いた時に、言葉として外に出しています。
私の言葉は、作品でも仕事でもなく、
ライフワークとしてずっと続けていきたいことです。」

 

森脇家言行録(http://maru.morisei.net/