NIWA MAGAZINE

  1. exnibition
  2. trip

青の導く場所 vol.6 文/安部 太一

青の導く場所vol.6

 

青の導く場所vol.6

“duodje”

 

 

北欧のサーミという少数民族が作る工芸品を“duodje”(ドゥオッチ)と言って、それには“愛情のこもった手で作られたもの”という意味があるそうだ。

 

その頃僕は20代の後半で陶芸はまだ勉強中。立ち寄った大阪日本民藝館で表紙に写った衣装に惹かれて,、開いたページのその言葉に感銘を受けたのを覚えている。ああ、僕もそんなふうにモノを作って生きていけたらいいなと。

 

41歳の僕は今、なんとなくまたそのことを思い出してその「北欧、トナカイ遊牧民の工芸展」の図録を開いている。ちなみにその展覧会は1987年柳宗理さんが日本民藝館館長の時に開催された。

 

サーミ人は長い間、狩猟やトナカイを飼って遊牧していた少数民族で、文献上最も古い記述は起源1世紀。固有の言語と文化を築き上げたが、多くの先住民族がそうであったように、新しく来た民族に圧迫を受ける。原住民を近代化するために魔女は磔にされ、(魔女と書いてあったけれどシャーマンのことではないかな)精霊を信仰する彼らの神聖な場所は犯され、教会が建てられてキリスト教や新しい文化が強制的に普及された。

 

サーミ人の民族衣装は色が鮮やかで、森の中や、雪原で見たらどんなに美しいだろうと思う。生活のなかで万能の力を有するナイフは、樺の木か動物の角で作った鞘と柄がついていて装飾が施されている。ナイフ職人の施すその装飾は、自然界の摂理と人類の責任の相互関係を示唆している。ナイフの装飾は本当に素晴らしい。

 

どうして道具を装飾するのだろう?時間をかけて。

道具として目的に叶えば足りるのではないか。

 

心へ作用する部分を大切にしたのだろう。

そう思う。(それを確認するために再び本を開いたみたいだ。)

 

 

7月2日、空気が生暖かく湿度が高くて息が詰まりそう。午後には風が強くなり、その空気を一掃してくれればいいのに、15時の気温は33℃。なんだか頭も思うように回らない。

 

仕事を終えて暦に詳しい妻にはこの時節、どんなことが書かれているのかを聞いてみる。夏至から11日を過ぎた5日間を雑節では半夏生と言うらしい。

 

その5日間は働かないとか、天から毒が降る、井戸に蓋をする、この日に収穫した野菜を食べてはいけない、地面には毒の草が生える、妖怪が徘徊する、竹林に入ってはいけない。など良いことが書いてない。この時期、カビなど雑菌が発生しやすいことに関係があるのかもしれない。

 

梅雨も終わりに近づくと気も滅入って思考力や判断力もなんだか鈍る。そういう自然界から人が受ける心身への影響を共有して、上手に生活する智慧を古の人は持っていたのではないだろうか。

 

日本人にしてもサーミ人にしても、古の人の感覚は僕らと比べ物にならないくらい鋭かったのだろう。

 

半夏生、半分夏が生まれる。

 

一年の半分が過ぎた。

7月4日、雨上がりの朝、水たまりに映った空に雲の間から青い夏空が見える。

 

 

 

安部太一(陶芸家)

1975年 島根県生まれ
2001年 陶芸をはじめる(父・安部宏に師事)
2006年 個展等、活動をはじめる
2010年 独立、現在は島根県松江市にて制作

http://taop410.com/