NIWA MAGAZINE

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「素と人」vol.4 陶芸家・舩木伸児さん  文/小川敦子

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「とにかく、無心になること。それだけですよね、器をつくるというのは」

 

 

舩木さんの器に出会ったのは、今から2年前。その器からは、風の音、草の揺らぎ、光、水のさざなみといった風景のイメージが見えてきた。心の奥底に一滴の雫が落とされたかのような、静かで重みのある響き。器という形をとってはいるけれど、きっとこれは器を越えた、何かの表現なのだろうと想像した。

 

正直なところ。民藝や柳宗悦といったことに興味が湧かなかったし、ある種のデザイン好きの中で語られる「民藝とものの在り方」には、まったく心が響かなかった。ひとつのスタイルを物の見方の手本とすること自体、あまり好きではないからだ。作り手と言葉を直接交わさなくとも、作り手と深く対話をすることができる、と私は信じている。作品を通して、自身の心の奥底と響かせ合いながら、相手の想いや意図を想像すること。その時間は、なににも代え難いぐらいとても心豊かな時間だと思う。

 

民藝は、「ものの見方」の話なのだろうと、それまでは思い込んでいた。けれど、舩木さんの器に出会い、その思い込みは捨て去ることとなった。もっともっと純粋で、もっともっと深いこと。それは目に見える世界の話とは、また別のことを伝えようとしているのではないだろうかと、器を通して、感じることが出来たからだ。

 

「僕は、あえて、この宍道湖の砂を使うし、この土地の釉薬を使う。あえて、なんですよ。そこに意味があるから」。そう、自身の足もとを見つめながら、器をつくるということ。宍道湖のほとりにあるアトリエで、舩木さんは、とにかく無心になることで、その土地でしか作れないものを生み出していく。そこに流れる風や草の揺らぎと心を響かせ合いながら。器の形をつくり、そして、柄を描く。その器から、私の心に、ウィリアムブレイクのある一編の詩の言葉が思い浮かぶ。

 

 

 

To see a World in a grain of sand,
And a Heaven in a wild flower,
Hold Infinity in the palm of your hand,
And Eternity in an hour.

Auguries of Innocence by  William Blake

 

ひとつぶの砂にも世界を
いちりんの野の花にも天国を見
きみのたなごころに無限を
そしてひとときのうちに永遠をとらえる

 

 

 

「民藝は、ものの話ではないんですよ。決して違うんだ」。

舩木さんの心を通して見えてくる、森羅万象の世界。

作り手が、無心になったときに見えてくる、自身の心の奥底にある「心の庭」のような世界。ウィリアムブレイクは、それを「天国」と表現したのかもしれない。私たちは、作り手の作品を通して、その世界を垣間みることができる。

 

 

 

舩木伸児(ふなきしんじ)

陶芸家。島根県松江市、布志名窯元舩木家に生まれる。現在六代目。武蔵野美術短期大学卒業。民藝運動の柳宗悦らメンバーとも深い結びつきを持ちながら独自の作風を展開していった祖父道忠、そのあとを継いでさらに独特の造形力で唯一の仕事を完成させた父研児に続いて、土、釉薬といった素材は受け継ぎながら、やわらかく繊細な作風を生み出している。1984年に茶道具を対象とした公募展の茶の湯の造形展に入選して以来毎年のように選に入る。手びねりで丹念に追求された形、代々受け継がれてきたスリップウエアーの技法、そして細やかな色彩感覚で用いられる釉薬の色合いが独特の作風を生み出して、日本全国にファンをもつ。(book&gallary DOOR 高橋香苗 紹介文より)



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