NIWA MAGAZINE

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月の本セレクト「明恵上人」に寄せて - 京都高山寺のこと 文/小川敦子

narakyoto2013 183

 

京都市内から、バスで約50分。栂ノ尾山高山寺はある。明恵上人のお寺である。そこは、いかにも修行の場にふさわしい、森と共にある場所だった。参道に一歩入ると、そこは明恵上人の世界だ。雨にぬれた苔の香りが漂う。

石水院から眺める山々の姿。余りの心地よさに、南側の縁では雨音にたゆたうかのような大人たちが、のんびりと過ごしていた。私は、お茶をいただくことにした。ここは、日本最古と言われる茶園がいまでも存在し、境内ではお抹茶を点ててくれるのだ。池に落ちる雨音を聴きながら、お茶をいただき、心を無にする。贅沢なひとときだ。「夢想」するのに最適な場である。

実は、お茶を頂いている横で、大変興味深い「会議」が行われていた。海外から仏教美術展を開催したいというキュレーターが訪れ、齢80は超えていらっしゃるというご住職がいらっしゃった。ちなみに、ご住職は女性である。とても、深くてやさしいお声だった。そして、私は偶然、この瞬間に立ち会えたことに、深く感動していた。というのも、明恵上人は、存命中にここから旅立つことができなかったのだ。釈迦の地への巡礼への道は、今亡き後も、このような形で叶っている、ということ。

そして、この場所は、古代信仰の場でもある。それは、寺の奥の森を目にしていただければ分かるだろう。一木一草にいたるまで、「生きている」。かつて、明恵上人は、この森の木々たちと、どんな話をしたのだろうか。森から眺めたであろう月明かり。様々な情景を夢想しながら、私はその場所を後にした。

 

京都栂ノ尾高山寺

〒616-8295 京都市右京区梅ヶ畑栂尾町8

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