NIWA MAGAZINE

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生き神さまたち vol.1  文/竹添 友美

ensoku

お金と計算と争いごとが大の苦手という一連の人たちがいます。

人類の地球退場を遅らせるために選ばれてこの世にやってきた人たちです。

 

これはアトリエひこの武爺さんが、なかくんというアーティストの作品集の冒頭に寄せた前書きのほんの一部です。幸運にもこんな人たちとご縁ができたのは、1年半くらい前のこと。

 

アトリエひこは、ダウン症と重い心臓疾患をもつアーティスト・ひこくんのお母さんが1994年に自宅でスタートし、ひこくんと同じように長時間の作業や活動が困難な仲間たちが集まって絵を描いたり、遠足にいったりする自主運営のアトリエ。みんな、それは素晴らしい、気の遠くなるような、ゾクっとするような、衝撃的で自由でのびやかな、エネルギーに満ちたすごいものを創るアーティストたちが集まっています。

 

縁あって、私は昨年からこの「ひこ遠足」に参加させてもらうことになりました。美術の先生だけどみんなの保護者で兄弟で友達でもある史子さんと、アウトドアからインドアまでなんでも万能で80代にして青年の心身を持つ武爺さん、マイペースでやさしくて素直なひこのアーティストたちが、釣りやお花見や、展覧会にいったり紙ヒコーキ飛ばしたり、いろんな遊びをしにあちこちに出かけます。

 

月に一回、微力ながらもお役に立てるかとはじめた遠足スタッフだけど、あまりに等身大で過ごせるのが心地好くなり、たまに顔見せてのびのび楽しく遊んでるだけの風来坊のようになっています。彼らはあまりしゃべらないけれど、とても鋭い感覚と豊かな表現力を持っているので繕ってみせてもすべてお見通しのような気がして、いろいろと自分をごまかせなくなります。

 

「このひとたちの絵をみてるとな」

 

正確には覚えていないけれど、あるとき史子さんがこんなことを言いました。

 

「ものすごい何代も先の未来からとか、天からのメッセージみたいなものを神様がこの人たちに描かせてるんじゃないかと思うねん。そういう役割を背負って何度も何度も太古の昔から生まれ変わりながら存在してきた、そんな人たちじゃないかと思う時があんねんな。あんまりいうたらあかんけど」

 

あんまりいうたらあかんけど。という一言に、そんなこと言って周りからのプレッシャーがかかったりして彼らに必要以上の重荷を持たせたくないし、いまこの時をなんとか幸せに生きてほしいというのだけが一番の願いだし、という親心のようなものを感じました。

 

じっさい、障害を持って生まれてくることにつきまとう不自由さがあります。身体が動かしづらかったり、病気をしやすかったり、会話するのが難しかったり、いわゆる「普通の」社会生活を送るには人一倍、いや何倍もの困難が起きます。歳をとってくるし、目に見えることだけを追っていくと現実はなかなか厳しい。けれど、何十年もずっと、普段の様子や作品を通してひとりひとりの心身の状態をほんとうによく見てきた史子さんには、もっと彼らの本質に迫るものが見えています。史子さんがある日彼らを「生き神さまたち」と言ったとき、すとんと納得してしまった。それはかれらにぴったりの呼び名でした。

 

 

アトリエひこ
〒547-0044 大阪市平野区平野本町4-3-20
HP: http://atelier-hiko.blog.jp
竹添友美
編集・書き物
十数年間の会社員生活の後、2007年より編集見習いを始める。2010年より雑誌、WEBmagazine、イベントの企画、編集、取材を通じて地域で丁寧に暮らしを営む人びとや風土や文化を守り育てる人びとに出会う。不惑を過ぎても惑うし、知らないことは増え続けるし、価値観も変わる。そんな日々の振動に耳を澄ませ、記録し、記憶し、伝えていきたい。