NIWA MAGAZINE

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生き神さまたち vol.2  文/竹添 友美

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大江正彦くん。通称ひこくんの絵をはじめて観たとき、思わず「うわははーすっごいなあ」という声が出てしまい、頬は知らずと緩み、手足にさあっと鳥肌が立って自分の心身が喜んでいることがわかりました。キラキラと周囲を照らすような、とくとくとエネルギーが溢れだすような、ピュアで明るく天真爛漫、おちゃめで大胆で好奇心に満ちたひこくんそのものの絵が飛び出して、噛りつきたくなってしまうような愛おしさがあり、どこか懐かしさもあり。唯一無二のひこくん、ここにあり。一言でいうなら、「全開」。うまく描こうとか、どう描こうとかを越えてその人の本質だけがキャンバスに溢れ出し踊っている絵とは、こんなにも人にパワーを与えるものなのか。と身体で感じた衝撃の瞬間でした。

 

動物好きなひこくんは、カラスがいれば両手をはばたかせて「カーァ」と話しかけ、羊がいれば「ンメェー」と鳴き、犬にも猫にも鳩にも虫にも、遊びのお誘いをしては断られ、威嚇されていますが、めげません。遊園地でもまっさきに乗り物に向かっていくタイプ。吊り橋や、高いところも大好き。怖いもの知らずでぐんぐん気になるものに近づいていき、いつもマイペースで好奇心全開。でも置いてけぼりになっている人がいないか振り返って、おいでおいでと手招きしてくれるし、はぐれていれば探しに行ってくれる、気遣いの人でもあります。動物も人も大好き。

 

それから相撲も大好き。「すもーすもー」とよく唱えています。場所が始まると同時に描きだし「ひょーしょーじょー」の時に描き終わる、というひとつのリズムがあります。絵の具が凸凹の土壁のように塗り上げられて、重たくなって、カタマリになってボロボロ落ちたり絵の具が飛び散って床から椅子から抽象画のようになって、とっくに完成したかのようにみえる、その可愛いけれど凄まじい絵を、千秋楽の日まで終わらせず描きつづけます。同じルールで20年くらいもの間コンスタントに、アスリートのように毎日毎日とてつもない集中力で絵筆を握り、ただ描きたいというシンプルでピュアな衝動だけで描きつづけているのです。夜遅くまで付き合うおかあさんは、みるみるうちに消費されてゆく白黒緑の絵の具の減り具合にくらくらしておられますが。

 

ひこくんが絵に向かう姿はぴかぴかと神神しい。誰にも邪魔のできない、堂々ときっぱりとしたものです。誰もが応援したくなる、ひこくんの背中です。

 

photograph by Atelier Hiko

 

アトリエひこ
〒547-0044 大阪市平野区平野本町4-3-20
HP: http://atelier-hiko.blog.jp

 

 

竹添友美
編集・書き物
十数年間の会社員生活の後、2007年より編集見習いを始める。2010年より雑誌、WEBmagazine、イベントの企画、編集、取材を通じて地域で丁寧に暮らしを営む人びとや風土や文化を守り育てる人びとに出会う。不惑を過ぎても惑うし、知らないことは増え続けるし、価値観も変わる。そんな日々の振動に耳を澄ませ、記録し、記憶し、伝えていきたい。