NIWA MAGAZINE

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生き神さまたち vol.3  文/竹添 友美

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松本国三さん。通称国ちゃん。好きなものは歌舞伎、舞妓さん、美少年、リス。国ちゃんのウエストポーチには、チップとデール。サンタの格好をしたチップとデール。信州のオコジョ。イギリスのリス。モン&ブランのブラン(チップとデールがつくったくまさん)。その他多数がいつもくっついて大所帯です。歌舞伎や文楽や琳派展、都をどりの宣伝用チラシを見れば集めています。それからアンケートコーナー。どこに出かけても必ず立ち寄ります。律儀に全部の欄に何かを書いて埋め終わるまで、その場から離れません。そういえば、と先日、史子さんが思い出したこと。アトリエ旅行で境港~玉造に行ったとき、国ちゃん、温泉旅館のアンケートの「お友達をご紹介ください」欄に「水木しげる」と書いていたそうです。

 

国ちゃんは、ただでさえ丸い背中をさらに丸めて書く・書く・書く。紙とペンがこんなにも熱狂的に使われることがあるだろうかという勢いで書き続けます。大好きな歌舞伎と舞妓さんの「舞」は横線も縦線もどんどん増えていき、ほぼ格子模様のようになります。ある文字は省略され、ある文字は増殖し、重なり合い、紙面を埋め尽くし続けて終わりはいつ来るのやら、国ちゃんのみぞ知る。たまに読めてたまに読めない文字・文字・文字の集合体は詩的な、神話的な記号のようにも宇宙への手紙のようにも見えます。

 

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あるとき、国ちゃんから鬼屋東京というところに宛てた手紙の束を、アーカイブ撮影するところに立ち会わせてもらいました。一枚ずつでも存在感のある国ちゃんの作品が、何十年にもわたる夥しい手紙の束になっている濃密さ。封筒の外側にまでびっしりと文字が書かれ、シールが貼られ、スタンプが押され、これはだいじなもの。という堂々たる気配が漂っています。国ちゃんがペンを握り黙々と綴ってきた文字の合間にときどき懐かしいキャラクターもののシールが貼られたり、美少年たちのブロマイドや折り畳まれた映画のパンフレットが挟まれたものもあり。長く静かに集中した時間の積み重なりを眺めながら、胸がいっぱいになりました。

 

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photograph by Atelier Hiko

 

 

アトリエひこ
〒547-0044 大阪市平野区平野本町4-3-20
HP: http://atelier-hiko.blog.jp

 

 

竹添友美
編集・書き物
十数年間の会社員生活の後、2007年より編集見習いを始める。2010年より雑誌、WEBmagazine、イベントの企画、編集、取材を通じて地域で丁寧に暮らしを営む人びとや風土や文化を守り育てる人びとに出会う。不惑を過ぎても惑うし、知らないことは増え続けるし、価値観も変わる。そんな日々の振動に耳を澄ませ、記録し、記憶し、伝えていきたい。