NIWA MAGAZINE

  1. exnibition
  2. trip

生き神さまたち vol.4  文/竹添 友美

DSC_0025

 

中正人さん。通称なかくん。好きなことは釣り。「なかくん、釣り行ったの?」「うん」「なんか釣れた?」「さば」「楽しかった?」「うん」。なかくんの受け応えは短いけど、いつも変わらぬやさしさと気品があり、大きく人を包み込む力があります。すべてを受け入れてくれるような、その「うん」を何度でも聞きたくなって、わかっていても毎度同じ質問をしてしまいます。

 

作品集で観たなかくんの絵は土から湧いてくるような根源的な強さと暗さがあり、火のようなドラマチックな激しさもあり、普段の様子からは感じられない迫力に満ちています。作品をじかに観たことがなかったので、アトリエを訪問しました。史子さんが「たけちゃん描いてみる?」と、なかくんに聞き、え。嬉しいけど怖い。マントヒヒぐらいにはなる覚悟あるけど、鬼みたいなすごいの出てきたらどうしよう…と戸惑う間もなく「うん」と小さく答えるなり、目!まつげ!口!歯!大きいとこから先に、どんどん迷いなく気持ちいい速さで描いてくれます。心配をよそに、可愛くて面白い肖像画が出来あがり、我が家の家宝となりました。うれしくて毎日眺めてはニヤニヤしてしまいます。

 

 

nakakun

 

 

せっかくアトリエにいるので単独インタビューを試みました。

 

「なかくん、今一番好きなことはなんですか?」「おえかき」

(私に気を使っている)

 

「ほんとは、釣り?」「うん」

(たぶんこれが本音)

 

「今週はどこに行ったの」「吉野川」

「釣りとお絵かきどっちが好き?」「りょうほう」

(また気を使っている?)

 

「食べ物は何が好きですか?」「カレー」「一緒だ!」「うん」

 

「最近楽しかったことはなんですか」「おえかき(私を指さす)」「あ、わたし?さっき可愛く描いてくれたね。ありがとう。嬉しいです(おじぎする)」「ふふふ」

 

「じゃあ、最近悲しかったことはなんですか」・・・しばらく考えて、首をちょっと横にふる。

 

「最近腹立ったことある?」・・・困った顔になって、首をちょっと横にふる。嫌な質問してごめんね。

 

「次の遠足どこいくの?」「カラオケ」「何唄うの?唄ってみて」「ふふふ」・・・はぐらかされました。

しょーもないことたくさん聞いたけど、ずっと微笑みを絶やさずにちゃんと答えてくれました。

 

いつでも誰にでも、相手の期待にきちんと応えよう、ほんのちいさな軋轢も生まないようにと気をつかう、その気持ちがあの「うん」に込められたやさしさと気品につながっているように思います。いつもありがとうね、なかくん。

 

写真一番上/photograph by 宮脇達

 

 

アトリエひこ
〒547-0044 大阪市平野区平野本町4-3-20
HP:http://atelier-hiko.blog.jp

 

 

竹添友美
編集・書き物
十数年間の会社員生活の後、2007年より編集見習いを始める。2010年より雑誌、WEBmagazine、イベントの企画、編集、取材を通じて地域で丁寧に暮らしを営む人びとや風土や文化を守り育てる人びとに出会う。不惑を過ぎても惑うし、知らないことは増え続けるし、価値観も変わる。そんな日々の振動に耳を澄ませ、記録し、記憶し、伝えていきたい。