NIWA MAGAZINE

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表現する、私。〜 Interview:Coci la elle ひがし ちか
さん

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日傘作家・デザイナー ひがし ちかさんに聴く

こしらえる、ということ。

 

 

私には、「何か」がある。

そう信じて、生きてきた人である。

私には、「何が」があるの?

そう問い続けて、生きてきた人である。

「ひがし ちか」であるために

生まれてきた人である。

そうして、この世に1点しかないものを

手仕事で生み出すことにこだわって

傘とスカーフのブランド「Coci la elle」(コシラエル)が

誕生した。

 

 

ひとつひとつ、こしらえる。

子供が眠った後、ひとり、チクチクと布地に刺繍を施す時間。

「その時間は、私は、何者でもない。男でも、女でもない。

母親でもない。なにも考えない。そして、いつの間にか、朝になっていて。

その時間が、本当に幸せ。かけがえのない時間です。私にとって」。

恍惚とした表情で、そう語る。

 

 

女の子の夢をカタチにしたような、可憐な日傘。

日傘は、キャンバス。物語のような色彩を布地に描き、

それは、特別な1点となる。時に、刺繍を施し、

アンティークのボタンを付ける。

すべてに手抜きをせず、とことん「手でこしらえる」ことに

こだわることが「自分の幹」である。それがなくなったら、

「ひがし ちか」が「ひがし ちか」でなくなってしまう。

手間をかけることを惜しまない。

 

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区役所でこの先どうなるんだろうと赤ちゃんを抱えて、

待合室で待っていたこと。母子寮。

女手ひとつで、子供を育てるという人生。

シングルマザーになったとき、仕事は何もしていなかった。

でも、生きていかなくてはいけない。守るべき存在のために。

覚悟が据わったとき、「日傘をつくる」という答えが出る。

 

 

「イメージが見えたの。日傘を作っている自分が。

確信があった。できる、と」。

傘作りの知識もなかったが、その構造がどうなっているのか

ゼロから、自分一人で調べることから出発。

まずは、材料をと、タウンページで検索しながら

ようやく、傘の「骨」を売る、一軒の商店を見つける。

持っていった試作の一本を見せるなり、

店のおじいちゃんから、一言。

「そんなんじゃだめだ。作り方、教えてやる」。

たまたま見つけた、その店で、傘作りのノウハウを習得。

 

 

そうして、友人の支えもあって開いた、はじめての展示会。

日傘は、完売。ミュージアムショップでの個展をはじめ、

発表の機会が続くようになる。日傘に、雨傘に、スカーフ。

クリエイションの幅も広がり、瞬く間に、ファンを増やす。

1年半前に、東京・清澄白河にある、

現在のアトリエ兼ショップを構えた。

 

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「Coci la elleを立ち上げて、4年。

最近、Coci la elleを会社にしました。

会社に出来るぐらい、儲かっていいですね〜とか、言われるけれど、

そういうことじゃないの。私、恩返しがしたいの。

これまでお世話になった人たちに。

そして、仕事として、ちゃんとお金という対価を払う、ということです。

恩なんて返さなくてもいいから、ちゃんと、続けてくれればいいよって、

みんなは言ってくれるんですけどね」。

 

 

対価、というのは、ひがしさんが今、挑戦している

最大のテーマかもしれない。

「傘のハンドル(持ち手)を作る職人さん、骨を作る職人さん。

ちゃんと、対価を支払いたい。

それは、高いとか安いということではないの」。

中国で作られた、何銭、何十円という安価なものよりも

ちゃんと作られたクオリティの高いもの。

そういう物に、対価が支払われなくなったら、

上質な物が、どんどん失われてしまう。

職人さんたちの手仕事があって、

自分の作る傘が成り立っている、ということ。

今では、京都の職人さんに、

とっておきのハンドルを作ってもらっているが

それも、はじめて傘づくりのノウハウを教えてくれた

お店のおじいちゃんが、紹介してくれたのだという。

「本当に、人に支えられている」と、ひがしさんは

熱っぽく語る。

 

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もともとは絵を描くことが好き。

でも、絵だけでは、なかなか食べていくことが難しかった。

ファッションやデザインの世界に身を置いたこともあるけれど、

やっぱり、描きたい。自分の気持ちを抑えられず、

仕事を点々とした。ずっともがきながら過ごしていた20代。

でも、人から言われた一言を、ずっと大切にして生きてきた。

「ちかには、絶対にあるよ。何かがあるよって」。

自分の中に眠る、自分にしかないもの。

そう信じ続けたからこそ、「特別なこと」を生み出す人になった。

人の心に響く「何か」を表現する。

日傘は、ひがしちかという人が、ずっと問い続けてきた

ひとつの結果なのだ。

 

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一人の表現者としての人生を生きる。

そこに、妥協はない。私が私でいるために。

表現者であり、母であり、女性であるという人生。

常に、手を動かし、心を込める。

素敵なその人は、常に、挑戦し続けている。

 

取材・文 小川敦子

 

 

 

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ひがし ちか
日傘作家・デザイナー

 

1981年長崎生まれ。絵が好きだった父の影響で幼い頃から絵を描く。
文化服装学院卒業後アパレル勤務などを経てなお絵を描き続ける中で、
「日傘」をキャンバスのようにして描くことに思い至る。

2010年7月「日傘屋Coci la elle」と称して初めての展示をNo.12 GALLERYで開催。
その後、ギャラリー、セレクトショップやミュージアムショップ、百貨店などでの展開を通じて、
独特の色彩感とユーモアを織り交ぜた斬新な表現とそれを日傘に施す意外性とオリジナリティが評判となる。

 

ひとつひとつ手描きの絵柄や刺繍を施す一点物の日傘には、
作品と商品(道具またはファッションとしてのアイテム)の間に
揺らぐ魅力があり、
日傘の新たな価値観をつくりだしている。

現在は、絵や写真のコラージュのプリント生地での雨傘やスカーフも製作している。
日傘の「一点物」という形態の継続と同時に、スカーフや雨傘の「量産」という形態も、
手にする人と間接的に日々を共有することを意識した挑戦になっている。

その他 ハンカチや小物など、自身の絵柄をプリントにして様々な物に
形を変える他社との共同製作も、
絵を描くこと、そしてそれらが誰かの日常生活に
喜びを与えることの可能性として、取り組んでいる。

現在は、清澄白河にアトリエ兼ストアをかまえる。
ブランド名は、つくり手の心を感じさせる日本特有の言葉「こしらえる」から。

 

Coci la elle Atelier&store

〒135-0022 東京都江東区三好2-3-2 1F
tel.03-6325-4667

http://www.cocilaelle.com