NIWA MAGAZINE

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本の話 vol.5 文/ book & gallery DOOR高橋香苗

vol.5   森についての本 Ⅴ

 

写真

 

 

この連載を機に、「森」という言葉を手がかりに本を探していくうちに、私自身が、日本における「森」は単に樹木の生い茂る自然の有様を示すだけではなくそれを不可分な領域として特別視し、崇める「聖域」の入り口であり、拠り所となっていたことをあらためて知ることとなりました。

 

連載の最初の頃、森といえばヨーロッパを浮かべていましたが、日本における「森」が何であるか知るにつれ、そこに今見ておくべき大切なものがあるという気持ちを次第に強くしております。

 

その森が今や様々な事情で失われてきている。開発によって様変わりしていくことは同時にその周囲の人々の営みも変えていくことでもあります。なかには古来より続けられていたことが根こそぎ無くなることもあるでしょう。長い歴史の中では当然のようにその時代に応じた変化は生じるものではありますが、千年単位で守られてきたものがいつのまにか無くなっていくことに対して、なんとか出来ないものか、という思いを募らせている人は少なくないと思います。

 

今回ご紹介する本は、なんとか出来ないかという思いを、日本各地で連綿と続く暮らしを見つめるところから、絶やすことなく次に繋げる一歩にするべく創刊された雑誌です。ジャパングラフという名前で一冊に一年以上かけて作られる雑誌です。そして一冊まるまるひとつの県を特集しています。創刊号の滋賀から始まり、岩手、愛媛、群馬まで発刊されて、5号目の島根はちょうど出たところです。

 

創刊号の冒頭に、「僕らが暮らす日本という美しい場所、、、、宝物のように豊かで美しい場所、、。」と続く挨拶文が載っていて、その言葉通りに各地に息づく暮らしが魅力溢れる写真と文章で紹介されています。

 

行ったことのない場所、見たことのない風景、そして会ったこともない人たちであるのに、妙に心が揺れる感じは何でしょう。

 

遠くに旅に出て、たとえば国道添いの家からもれる台所の灯りや、古い民家の二階に灯った蛍光灯の灯りが急に近くに感じられて、そこでの他人の暮らしが一気に胸をざわつかせることってないでしょうか。この雑誌にはそれに近いざわつきを覚えました。生きることは理想通りにはいかない。やむなき事情をいくつも抱えて重さと一抹の寂しさが常に背中合わせに進むもの。そんな人生の素の有り様が柔らかい表現の向こうにありありと見えてくるのです。誰しも一人の存在は寂しいものです。けれども、そこに「一人」をつなぎ止められる何かがあるから明るくたくましく進んでいける。それは家族であり、昔ながらの地域の輪であり、代々受け継がれていることに自然にのっかった暮らしであることを見せてくれます。

 

気分で何でも選びたいという「漂流」から、この雑誌は、地方に息づく暮らしを見つめることで、わたしたちをつなぎとめてくれるきっかけを与えてくれます。それはそのまま森の思想にも通じる気がしますが、偶然にもこのジャパングラフの代表であり編集長が森さんというお名前であるとは。意味深いものです。

 

 

JAPAN GURAPH ジャパングラフ

1 滋賀 (版元品切れ)

2 岩手

3 愛媛

4 群馬

5 島根(最新号)

 

 

★お知らせ

島根号の出版を記念して展示会およびイベントがあります。

2014年6月14日、15日 11:00〜18:00

清光院下のギャラリー  松江市外中原198−2

6月14日 14時からアナログ写真のワークショップ

15日 14時からトークイベント「暮らしを見つめる」

連絡先 090−8655−5126 森善之

 

 

 

高橋香苗 プロフィール

1984年 結婚を機に島根県の松江に移る。2004年~子育てが一段落したことと、単発のイベントを企画したことで、交友関係の質が変わり広がっていたことから、自宅の一部で本やテーブル周りのクラフトなどを扱う「DOOR」いう店を始める。2010年地元の物作り作家や友人たちといっしょに、隠れた山陰ならではものを探るために、手仕事を紹介するイベント「ひびきあうもの」を企開催。以来毎年行っている。

 

book & gallery DOOR

島根県松江市上乃木1-22-22

tel 0852-26-7846