NIWA MAGAZINE

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五感で捉える vol.4 文/小川敦子 イラスト/西山ゆか

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Hahai no ka ua i ka ulua’ āu

 

森は生命の源。

 

 

 

数年前、単身訪れたハワイ。海が目の前にあるゲストハウスに滞在していたにも関わらず、私を惹き付けてやまなかったのが、鬱蒼と植物が生い茂る、森の植物だった。なぜ、こんなにも美しいのだろう。はかなげな美しさを持つ、日本の植物と違って、色やみずみずしさが、圧倒的に異なるのだ。そして、その生命力。ひとつひとつの葉や花々が、まるで「意思」を持っているかのように、存在する。以前、パイナップルの絵を書いてほしいと、フルーツの会社から依頼を受けたジョージア・オキーフが、滞在中、パイナップルの絵を一枚も描かずに、ひたすら森の植物を描き続けた、という逸話もあるぐらいだ。(オキーフが描いた植物の絵の内、数点は、ホノルル美術館で目にすることができる。)

 

私がハワイを訪れた最大の理由が、「ハワイアンレイ」について、深く知りたかったということ。ハワイのネイティブの歴史をしっかりと感じさせる、ある一冊の写真集と出会ったことがきっかけだった。レイとは、森で採取した植物をネックレスのように編み、首から下げたり、手首、足首につけるというもの。街中でも、フラワーショップならぬ、レイショップが存在し(そこでは、森の植物ではなく、タイなど熱帯の国から輸入された植物をメインに販売用として作られている)、ちょっとした御礼や御祝いに、プレゼントするという習慣がある。

 

その写真集は、ハワイの原住民であるポリネシアン系の美しい人々が、その土地の固有種(その土地にしか生息しないもの)を使ったレイを身につけるというものだった。いわゆる観光向けのものとは、全く異なり、まさに「神々しい」という言葉を表すかのような佇まいだった。そう、レイとは、本来、森に入る「許し」を得るために、自然の神様や森の精霊に捧げるもの。つまりは、お供えのためのもので、常に自分たちを守り、そして育んでくれる森に対して感謝の心を忘れないという、ネイティブの人たちの大切にしてきた想いがそこにはあるのだ。森と人は心も体も深く、とても深く繋がっているのである。

 

光、風、水。植物が生育するためになくてはならない、この3つの要素が、ハワイでは1年を通して揃っている。生命力に溢れた植物たちが集まる森は、人が生きていくために、なくてはならない「水」をもたらしてくれる。現地では聖地とされる、森の奥にある滝を実際目にしたとき、その圧倒的な力強さに、畏敬の念を抱かずにはいられなかった。自分が「そちら側」に行きかけてしまうかのような感覚。「自然の力」などという、生易しい言葉で言い表すことはできない。自分自身は、自然の一部、または、物質のひとつに過ぎないのだということを、はっきりと思い知らされる。

 

Hahai no ka ua i ka ulua’ āu―森は生命の源。ハワイに伝わる、この言葉が意味することを、今、より深く知りたいと思うのである。

 

★イラストは、グリーンだけであしらったレイをイメージして、西山さんに描いてもらったもの。「Palai」、「Maile」という2種の樹木の葉と蔦を絡めて作られるこのレイは、主に男性が身につけるもの。数年前、彼女には、このレイのイラストを幅3メートルの生地に描いてもらい、パウ(フラダンスで女性が纏うスカート)をイメージした、ふんわりとしたボリュームのあるスカートに仕立てた。