NIWA MAGAZINE

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「空と記憶」 文/小川敦子

 

tagu 004 - コピー

光の世界

 

やさしい やさしい 光に包まれた空気感

私は 青い その憂いのある 写真たちを眺めながら

「あの頃の」東京を想い出していた

懐かしい とても懐かしい 空の記憶

「帰りたい」  そう素直に思える 自分がいた

 

東京にいた頃、とても好きな時間帯があった 夕方

夕焼けに彩られた空と様々な形の雲が合わさる

白とピンク色と水色と薄紫が混ざった

透明な時間 日曜日の夕方に 河の土手から 空を見上げながら

いつもうっとりとしていたのだった

 

うれしいときも ちょっとかなしいときも

そのときの気持ちに そっと寄り添ってくれる

そんな柔らかな色合いの 夕方の空が好きだった

それは これからも これまでも どこにいても

ずっと変わることはない 見上げれば

そこには ただただ ありのままに

光のある やさしい空がある

 

それでも

あの日だけは いつもの空は

いつものようではなかった

グレーで とても暗くて

いつものやさしい表情は そこにはなかった

その数分後に起こることのすべてが

その濃い色彩のなかに表れていた

 

色の記憶

それは 大きな揺らぎと 大きな水のうねりの光景とともに

私の記憶から 消えることはない

いや 覚えていたいのだ しっかりと くっきりと

これからも これまでも ずっと ずっと

わたしの キズ として

それぞれの キズ として

 

残響のように それぞれの記憶のうちに 残されたまま

グレーの光景が霞んでいる

 

それでも

その光景のなかに いつか いつでもいいから

柔らかで やさしい光が差し込み

すべてをゆだねたくなるような

夕方のあの空にすっぽりと包まれるような

幸福感で満たされることを 願っている

 

ずっと ずっと

これからも これまでも

 

 

イラスト/西山ゆか