NIWA MAGAZINE

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香りを創る vol.6 文/Chikako

ゆず

 

 

先日急遽引越しをした。以前の住まいから車で3分程、仕事場からもそう遠くない距離に。そこは新築の香りがまだ抜け切れないアパートだ。キッチンとトイレと風呂場に取り付けられている既存の電気以外まだ明かりはない。そこで、キャンドルやらソーラーランタンで明かりを灯し、エコの様な暮らしがスタートした。

 

仕事から帰宅する度に、アパートのあの新築の香りが鼻につく為、色々な方法で部屋の空気感を変えようと試行錯誤してみる。そこで、趣味で集めていた香り製品をこの機会に試す事にした。

 

-靴箱にはラベンダーサッシェ

-トイレには台湾の友人から頂いた台湾紅檜オイル

-クローゼットにはオレンジフラワーのサッシェ

-リビングにはトマトの香りで調香されたキャンドル

-風呂場にはローズの花びらが入った石鹸

-浴槽には頂いた新鮮なゆずを浮かべた。

 

けして広くないアパートに無造作に思いつきで香りを配置していく。少し時間が経った頃、何かが調和されていない事に気づく。インテリアのオブジェの配置がなかなか決まらないかの様にだんだんと気になり始めてくる。そこで、香りの配置換えを試みた。その場にストンと来る香りもあれば、そうでない香りを一つ一つ順番に探して行く。香りと香りの間を確認する作業もしてみた。昔絵を描いていた頃にモチーフをひたすら描くのではなく、物と物の間も大切にするようにと習ったように、香りの間を気にしながら位地を再確認してみる。そんな作業を暫く続けて行き、気に掛けた香りがだんだんと抜けきる頃、気付けば夜も深まっていった。

 

一日の疲れを取る為に先程用意したゆず湯に入る。ほうじ茶に生姜を入れたお茶も風呂場に持参していた為、生姜の味とゆずの香りが良い感じで混ざり合う。そして石鹸からバラの香りがし、シャンプーの香りやら何やら、まるで空間では色々な色が混色しながら重なり合って行く様だ。私はその一瞬一瞬の香りを楽しんでいた。

 

Chikako
インセンスプロデューサー、クリエーター。
多摩美術大学で染織を学ぶ。その後テキスタイルデザイン事務所にてテキスタイルデザイナーとして従事。
2012年単身フランス・グラースにあるGrasse Institute of Perfumeryにて香料や香水の歴史、調香を学ぶ。2014年7月東京香堂Tokyo-Grasseの活動開始。
http://www.tokyo-kodo.com