NIWA MAGAZINE

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香りを創る vol.9 文/Chikako

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6月フランス・グラースに旅立った。

 

私が滞在中のお天気は、例年より肌寒い。

この時期は、晴天が続き肌がジリジリと焦げる位の暑さなのに今年は少し違った。一日目の早朝、曇り空が広がって、雲が土地の香り全てを閉じ込めているみたいに空に蓋をしていた日、大地や木々や虫の香りが濃厚に広がっていた。久し振りの自然の濃い香り。そうそう、これが南フランスだ。

植物のエネルギーがここでは満ちていて、朝と晩でも香りが変わる。

 

日中、毎年必ず行く高原を訪れた。標高約1,500mの所にあるその場所は、野生のラベンダーが自生している。今年は雨の影響で、まだまだ花の蕾も小さかった。それでも風と共にその美しい香りはいつものように宙を舞っていた。何かをするのではなく、ただそこに居るだけで植物の芳香を思う存分楽しむ事が出来る、そんな場所だ。山頂を目指す途中、私の好きなジュネ(Genet)の花を見つけた。

 

ジュネは黄色い小さな花の集合花で、遠くからだと春の訪れを告げるミモザのように山を黄色く染める。ジュネを知ったのは、香料の勉強をしていた頃、暖かみのあるやさしい甘さと太陽のような輝きがある香りだと思った。子供の頃から都心に住んでいる私は、植物の多くは写真でみる程度だったが、今では香料から植物の名を知り、実際に植物に触れるその瞬間が、至福の一時だ。

 

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香りの創作は、原料探しから既にスタートしている。忘れてはならないことは、原料農家さんから始まり香料となるまで沢山の方々が関わっている事だ。表には出て来ない方々の思いも乗せて香りが創られているかと思うと、一つ一つの香料が愛おしく思えてくる。昔行った畑で忘れられない情景がある。それは、ジャスミンの花かごを一杯にした女性の笑顔がとても眩しくて素敵だなと思った瞬間だった。

 

毎年新たな発見がある南フランスの自然を今年も噛み締めていた。

 

Chikako
インセンスプロデューサー、クリエーター。
多摩美術大学で染織を学ぶ。その後テキスタイルデザイン事務所にてテキスタイルデザイナーとして従事。
2012年単身フランス・グラースにあるGrasse Institute of Perfumeryにて香料や香水の歴史、調香を学ぶ。2014年7月東京香堂Tokyo-Grasseの活動開始。
http://www.tokyo-kodo.com