NIWA MAGAZINE

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湯気心地vol.2 文/岸本展明

 
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「ブレンド下さい。」
 
当店でよくある注文である。当店に限らずコーヒー屋ならば多い注文ではないだろうか。きっと「ブレンド」という言葉に何かしらの安心感を抱くのだろう。中には「ブレンド」という味の種類のコーヒーがあると思っている人もいるだろう。そして、そんな人は少なくない。それが良いとか悪いとかの話をしようとしているのではなく、今回は、そんなブレンドについてのお話。
 
ブレンドコーヒーというのは、複数の種類のコーヒーを混ぜて作られる。コーヒーを焙煎したお店、または、コーヒーを取り扱うお店が自店で考えた、言わばオリジナル商品である。
 
私がやっているIMAGINE.COFFEEではコーヒーの種類は常時6、7種ある。その中でブレンドは1種類作っている。1種類だけだ。コーヒー屋としては少ないほうかもしれない。私のお店では、ユニークで質の高いフレーバーを持つスペシャルティコーヒーを焙煎している。生産国はもちろん、いつ、どんな人たちが、どの様にして作ったコーヒー豆なのか、情報が明確なコーヒー。そんな個性豊かなコーヒーが好きで、紹介したくてコーヒーのラインナップを考慮している。
 
ブレンドを作る意味あいとして、様々なコーヒーを混ぜ合わせてバランスよいコーヒーを作るというのがあり、それが大きな役割の一つだと思う。私のお店のブレンドも、誰が飲んでも、朝でも昼でも夜でも、何かお菓子やパンなどと合わせても、もちろんコーヒーだけでも落ち着けるようなブレンドを目指した結果、今のブレンドに落ち着いている。
 
しかし、ブレンドをしたらせっかくのそれぞれのコーヒー豆の個性が薄まってしまうのではないか。正直に言うとそのように思うこともある。バランスよくて飲みやすくはなるが果たしてそれが良いのか。
 
「まずはブレンドを飲まないとね。このお店の一番のおすすめなのでしょう?」
 
お客さんにそのように聞かれるたびに複雑な気分になってしまうのだ。いや、正確に言うと“複雑な気分になっていた”。過去形だ。
 
というのも先日、人生で初めて「能」を観に行く機会があった。能というのは大がかりな装飾などはない。演者、囃子、謡(うたい)の全員がそのシンプルな舞台上で表現するのだ。そう広くはない舞台に十数人がそれぞれのパートに徹している。私はそのシュールで独特な雰囲気にいっぺんに魅了された。
 
あの日観た能を思い出したりするうちにふと、「コーヒーのブレンドも本来こうあるべきではないだろうか」と思うようになってきたのだ。この感情は能だけではなくて、自分の好きなバンドのライブを観た後も抱いたことがある。
 
つまり、一昔前のネガティブ要素を補うためのブレンドではなく、それぞれの個性を生かし、出しきるブレンド。そういうブレンドをつくるべきではないのか!と。そして私のお店の高品質なコーヒー達ならそれが出来ると思うようになってきたのだ。というか気が付いたのだ。
 
シングルオリジン(単一農園)のすばらしさはこのまま追究し続け、その上で、ブレンドの新しい可能性を今年は探ってみようかと企んでいる。良いブレンドが出来たらそのブレンドにまつわるお話もこちらでしてみたい。
 
そして、能、もしくは、バンドを今年はやってみようかとも、こっそりこっそり企んでいる。

 

 

岸本展明
2008年古民家を利用したカフェをオープンさせる。それと同時にコーヒー豆の焙煎に興味を持ち2013年に現店舗に移転の際焙煎機を導入し自家焙煎のコーヒー屋をスタートする。生産者が明らかで、質が高く、かつ、持続可能な生産体制にある「スペシャルティコーヒー」のみを扱い、日々焙煎に精進している。コーヒーに含まれるー様々な魅力に惚れ込んでいる。
 
IMAGINE. COFFEE
島根県松江市伊勢宮町503-1
0852-25-9277
12:00-23:30
定休日 日曜日

http://imaginecoffee.jp/

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