NIWA MAGAZINE

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食と人 vol.30 文/矢沢路恵

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器を継ぐ
 
 
割れた器に命をふきこむ。こぼれてしまった水はもう元には戻らないが、形あるものはまた新しいものに生まれ変わる余地がある。器の継ぎ方を学んでから1年。頑張ればまだやり直せる、と思うものが出来た。
 
数年、店で器を使用していると、まっさらで綺麗な皿より欠けたり割れたりする器の方が、比重が多くなってくる。どこかで歯止めをかけないと、また毎日、そして一日何度も使う皿に負担をかけてしまう。器がないと、料理屋として成り立たない。和食は器をそのまま口にもっていく食文化があるため、少しでも欠けてしまった器はお客様にはだせない。使うも洗うも手間のかかる器である。
 
重い腰をあげ、ちょうど一年前の秋より器の継ぎ方を習い始めた。うまれてはじめてすることなので、上手いもヘタもよくわからない。市販の接着剤で瞬間的にくっつくという簡単なことではないことが習ってみてよくわかった。日本式の修理方法である漆繕いを施した陶磁器には金繕い、銀繕い、錫繕いなどがある。繕った跡ははっきり分かるが、再び食器として使う事が出来る。外観を元の状態に戻し、美術品などの観賞用として直す修復法は西欧式であり、化学パテや塗料などを使用し直す。熱や水に弱くなるので再び食器としては使えないが、直した痕跡は分からないように仕上げることが出来る。
 
その日本式での修理方法は通称「金継ぎ」と言われ、継いだ跡の模様は日本独自の美意識であり、道具を大切に、愛着をもって使う心があるからこそのものである。あの東日本大震災の大きな揺れの後、自宅の食器棚に並べていた大切な器は一瞬にして粉々になった。割れたときに気付く、それがいかに大事なものであったか。捨ててしまえば、いつかはもう忘れ去ってしまうものだ。それを見捨てずに「繕う」という考えに気持ちがやっと動いたのは、大切なものが日に日に増えていったからなのではないかと思う。
 
漆を重ねて強くしていくことは、一度では出来ない。塗っては乾かし、また少しずつ重ねていく。人生と同じではないか。息を吸ってゆっくりはくように、一日いちにちの繰り返しである。
 
 
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写真は、出汁巻玉子
卵を何層も重ねて焼き、ふっくらさせる。その行程が、器を継ぐことに似ていると思う。焼き面が卵を固定させ、最終的にその層が大きな塊になって存在するのは、出汁をふくめても崩れない焼き重ねがあるから。器にうるしを塗り重ね強度を増し、水がしみこまないように表面をふっくらさせる、器を継ぐことそのもののように。醬油やみりんなどで味を付けた出汁と、2個ほどの割った卵をまぜあわせ、熱した卵焼き器に胡麻油をしき、卵液を少しずつ流し入れ3〜4回にわけて巻焼く。
 
写真/岩澤修平 器/平林昇
 
矢沢路恵
都内数カ所の飲食店でサービスの仕事に従事した後、2014年より料理人であるパートナーの山谷知生とともに、山食堂を前店主より受け継ぐ。飲食店は生産者と消費者をつなぐ役割という考えで、全国各地に生産者をめぐる旅をしながら、日本の地域に伝わる特産を探索する。
 
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山食堂  完全に家庭料理の店(海のものもございます。)
〒135-0022 東京都江東区三好2-11-6桜ビル1A 電話・FAX 03-6240-3953

都営大江戸線・東京メトロ半蔵門線 清澄白河駅下車 徒歩3分程
深川江戸資料館通り沿い・深川江戸資料館斜め向かい側交差点より五軒目

平日・夜=17時半〜21時半(ご予約優先)
土日祝・昼=12時〜売り切れ迄 夜=17時半〜21時半(夜はご予約優先)
※不定休

https://www.facebook.com/pages/山食堂/398470866947958