NIWA MAGAZINE

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器を作る。思考する。 vol.10  文/森脇靖

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vol.10  「魅せられる」

 

 

 

建物の外観の中程には階段室があり
一段一段歩みを重ねていくと街の喧騒が遠のき始め
徐々に人や物の気配が消えていく。
扉をあけると北欧で生まれた家具が置かれている
midiという空間が広がっている。

 

 

私は今、この場で器の会を開催しています。
毎日家具の中に身を浸し、自身が作った器と向き合いながら
お客様と会話し様々なことに思いをめぐらしています。

 

 

私が器作りを始めたのは、人の生活の中に活きる
「道具」というものに魅せられたからです。
人が直接手にするもの、
日々向き合い触れるものとしての器を想い
毎日土に手を添え作陶しています。
そして今、
この場で静かに呼吸しているかのように佇む家具を見ていると
人に添う「物」は生活の場から生まれてきたものだと実感するのです。

 

 

これらの家具は生活の中で使われ続け
人の手によって修繕されたものです。
北欧という遠くの国に生きた人々の日常から生まれた家具の中に
私の日常から生まれた器を配し毎日眺める中で、
器も家具も、物として単一で存在するというよりも
そこに人の手があり、人の体温があり、
人の息遣いが深く関わり成り立っているように思います。

 

 

知らない誰かが使っていた家具に囲まれながら
お客様と言葉を交わしていると、
家具、器、人、それらを取り巻く空間に
火が灯るような温かさを感じます。
人の生きる時間、決して特別ではない日常を送る、
そういう積み重ねが「物」を育てるのではないか。
そしてそれは、物と向き合い生活している人間を育てること、
人の心、考えを育てることとなるのではないか。

 

 

家具も器も道具という括りの中にあるもの。
道具として生まれる物たちは、道具として終わるのですが
その時の中で人の手によって扱われ、
触れられ続けることにより道具という域を超え、
それ自体に宿る力が存在を放ちはじめるだと感じました。
私は、「物」として眺められるものではなく
「使われる物」に心惹かれるのです。
家具の一つ一つに
表情があり、刻まれているように
人と共に時を経、育つ器の存在に魅せられるのだと
この場に居て、私はそう感じています。

 

 

■information

森脇 靖 陶展 at PENCIL MIDI

「森脇靖 陶展」をペンシルビル3階のPENCIL MIDI(ペンシルミディ)にて

11月1日(土)から11月9日(日)まで開催中。

〒730-0036 広島市中区袋町7-21

11:00−19:00

http://www.p-pencil.com/news/20141020.html

 

 

森脇靖

陶芸家。島根県邑南町生まれ。松江高専卒業後、県の工業技術指導研究所で陶芸の基礎を学ぶ。さらに松江在住の陶芸家原洋一に師事。2000年に邑南町にて独立開窯。以降島根県内外で個展を重ねてファンを増やしている。使い勝手が追求されたユニークなネーミングの食器を手がけてきたが、数年前に地元の益田長石を配合した釉薬による独特な肌合いと色彩を完成させて以来、それに合わせて造形にも磨きがかかり、ほどよい緊張感を持った有機的で豊かなフォルムの花器、茶碗皿などを生み出している。日常の暮らしと作陶は常に同じ線上にあると語っているように幼い二人の息子と妻との暮らしを大切にしながら真摯に器作りをしている。

(紹介文/book & gallery DOOR 高橋香苗)

 

森脇製陶所
〒696-0314
島根県邑智郡邑南町岩屋1273-4
電話:0855-83-2177
web:http://morisei.net