NIWA MAGAZINE

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器を作る。思考する。 vol.12  文/森脇靖

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vol.12「覗かせる」

 

 

会を催すとき作り手の自分には何が出来るのか。
会が始まる前は色々と考えるが
始まれば結局やっていることは毎回いつも同じ。
とにかく自分が生まれ、生活している中で身に付いたこと
それを通して考えたこと、家族のなかで生き、
今に至っている自分をさらけ出すこと。

 

私の日常の中から生まれでた器に囲まれ
会場に佇む私自身が
もし取り繕った何かを提案しようとする姿勢をとれば
他の誰かに伝わる何かなどきっとありはしない。
「日常」とは「素」とは
こんなにも説得力をもって伝わるものなのかと思うことがある。
たわいない話だと思い込んでいることが
実は一番人の心を動かすこともあるし、
生活の中で人様にも見せられないようなと隠したくなることが
実は一番心打つものだったりする。

 

誰もが生きている以上その生活と向き合っている。
十人居れば十の、百人居れば百のその人の息遣い、生活がある。
人の生活、営みは多様である。
しかし今、世間を見れば
人それぞれ多様であるはずの生活に対する
様々なイメージや提案が一方的に切り売りされている。
その中を浮遊しながら自分にあった何かを、
どれかを見つけなければならないかのような
そんな錯覚や不安を持ちながら私達は生活している。
幸福になるため、喜びを得るためのイメージが
さも誰でも手に入れることが出来るかのようにそこにあり
そこに自分の身を置くにはどうしたらいいのかと
時に自分自身を隠してでも追い求める。

 

私達が自分というものを意識し生きるとき
自分を見つめていると思いながらも実は
世に溢れるイメージを求めてしまっていることが多い。
様々なイメージを醸す社会の中で
自分はどこに所属し、どんなイメージの中で生きるのか
自分の立ち位置をその中から見つけようとしている。
そこで生きているという安心を得ようとする。
しかしイメージに近づこうと着飾ったり、演じたり、隠したりしているうちに、
いつの間にか本来の自分からどんどん遠ざかってしまう。
結局、あらゆる個が集まって社会ができているように見えて
実は社会の醸す空気に、イメージに近づくことが出来た個が
社会を形成し存在しているのだ。

 

私が持つそんな世間に対する難しい想いは
会を催し人と向き合うことでいつも柔らかくほぐれていく。
お客様がどのように器と向き合っておられるか
会場で伺う機会があると、次第に
その方がキラキラと輝いて見える時が多くあるのだ。
日常の自分を器に投影し掌にするとき、
そのかたは所謂よそいきの顔ではなくなる。
その人の生活、その人の毎日が自然に表情から溢れている。
自分の家の中では肩や表情を強張らせる必要も
イメージの中で生きようと必死に足並みを揃える必要もない。
一見何気ないように見える日常を、淡々と語っている時、
人はとても真直ぐで丸くそして輝いているように見える。
そうして私自身も素直で居れば居るほど
お客様も柔らかい表情で私に目や耳を傾けてくださる。

 

誰も何も個を失ったわけではないのだ。
個は別の個と繋がることをじっと待っているのかもしれない。
社会の一員として過ごすため
普段は守るように磨り減らないように表に出ないように
固めたり、隠したりしている個はある瞬間
コントロールできなくなりふいに顔を覗かせるのだ。
ほかの個と接するために。

 

私もお客様と向き合うことによって
社会が醸すイメージに邪魔されることのない空気の広がりを感じる。
このたび在廊した三日間も作り出された社会というよりも
人の重なりによって生まれた人の世を学ばせていただいたように思う。
社会の様々なシステムが発するイメージの中で
必死に生きようとする人間の一面を感じながら、
同時に、個を持ち苦も楽も精一杯生きている一面も、人の世に感じる。
飛び出した個と個で向き合ったとき私の気持ちはお客様に伝わり
またお客様の気持ちも作り手である私に伝わってくるように思う。
会という催しの場は私にとって
丸裸な個が生きている場なのである。

 

森脇靖 「日常の器展」

会場:CLASKA Gallery & Shop “DO”
東京都目黒区中央町 1-3-18 CLASKA 2F
tel 03-3719-8124
Open 11:00-19:00

会期:2015年1月30日(金)~2月22日(日) 11:00~19:00

 

 

森脇靖

陶芸家。島根県邑南町生まれ。松江高専卒業後、県の工業技術指導研究所で陶芸の基礎を学ぶ。さらに松江在住の陶芸家原洋一に師事。2000年に邑南町にて独立開窯。以降島根県内外で個展を重ねてファンを増やしている。使い勝手が追求されたユニークなネーミングの食器を手がけてきたが、数年前に地元の益田長石を配合した釉薬による独特な肌合いと色彩を完成させて以来、それに合わせて造形にも磨きがかかり、ほどよい緊張感を持った有機的で豊かなフォルムの花器、茶碗皿などを生み出している。日常の暮らしと作陶は常に同じ線上にあると語っているように幼い二人の息子と妻との暮らしを大切にしながら真摯に器作りをしている。

(紹介文/book & gallery DOOR 高橋香苗)

 

森脇製陶所
〒696-0314
島根県邑智郡邑南町岩屋1273-4
電話:0855-83-2177
web:http://morisei.net