NIWA MAGAZINE

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器を作る。思考する。 vol.2  文/森脇靖

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vol.2  礎

 

 

子供のころ住んでいた家の玄関の上がり框。
縁側の脇に無造作に積み上げられていた石の重さ、その下のダンゴ虫。
畑の傍らに立つ二本杉の表皮に当たる陽。
小川の水の流れとその冷たさ、淀みに潜るドジョウ。
雪にしなり低くなる竹林。

 

私が器づくりを想うとき
幼少期の身近な様々な風景をよく思い出します。
それらは私の体に棲み、消えることはありません。
これは単なる思い出というものでは決してなく
自分自身を作っている、成り立たせている「礎」でもあります。
当時体験したこと、感じたことが、
私の持つ感覚を作り、育み続けてきたのだと私は確信しています。

 

そして私は今、生まれ育った場所で器づくりをしています。
使う素材のほとんどは島根のものです。
これは意識してそうしたのではなく、

器を作り続けるなかで縁あって出会った素材で
気が付くと自然にそうなっていました。どれも思い入れの強いものです。

 

物というのは生まれるべくして、その場所に生まれてくるのではないか。
他に求めるのではなく、淡々とその場をおもい続けるからこそ
そこで生きる意味を考えるからこそ生まれ出てくる表現なのではないか。

 

私は制作にかかる前にかなり長い時間をかけて
仕事場から木々や地形を眺めたり
周囲の林の中に身を置き様々なものに触れたりします。
今の時期は製陶所敷地内に移植する樹を探しに裏の林に分け入ったりもします。
この時、私の心の目は外に向くものではありません、
内なるものに向いているという自覚がとても強くあります。

 

何よりも大きく何よりも繊細な、目の前の自然そして摂理に触れることにより
普段は意識しない「礎」から体全体にしっかりと張られていく根を感じるのです。
頭で考えるようなものは一切吹き飛んで、気づけば丸裸の心で立っている。
そうやって素になった私は轆轤を回し始めます。
陶土が持つ個性が両手から伝わってくると、手は自然に動き始めます。
目の前には形を変えていく陶土が存在する。
私はいよいよ、自分の体が陶土に触れているという感覚さえ無くなり
どうこうしようと手を動かすのではなく
芽吹き、伸び、日ごとに成長する草木を眺めているかのような心持になるのです。

 

自己が形作るのではなく
陶土という自然の、大地の産物が自分の礎を通して形をなす。
それが私の表現だと思います。

 

物というのは、何処からか引っ張ってきて形になるのではない。
何かと何かをくっ付けて生まれるのでもない。
作り手である自分自身の内なるもの、

礎を刺激されることによって生まれるものです。
私にとってこの地で生き、この地で作陶することは
自分の礎を育み続けることでもあります。

 

 

 

森脇靖

陶芸家。島根県邑南町生まれ。松江高専卒業後、県の工業技術指導研究所で陶芸の基礎を学ぶ。さらに松江在住の陶芸家原洋一に師事。2000年に邑南町にて独立開窯。以降島根県内外で個展を重ねてファンを増やしている。使い勝手が追求されたユニークなネーミングの食器を手がけてきたが、数年前に地元の益田長石を配合した釉薬による独特な肌合いと色彩を完成させて以来、それに合わせて造形にも磨きがかかり、ほどよい緊張感を持った有機的で豊かなフォルムの花器、茶碗皿などを生み出している。日常の暮らしと作陶は常に同じ線上にあると語っているように幼い二人の息子と妻との暮らしを大切にしながら真摯に器作りをしている。

(紹介文/book & gallery DOOR 高橋香苗)

 

森脇製陶所
〒696-0314
島根県邑智郡邑南町岩屋1273-4
電話:0855-83-2177
web:http://morisei.net