NIWA MAGAZINE

  1. exnibition
  2. trip

スープのチカラ 〜 Interview:薬膳マイスター・塚田美奈子さん

 スープ

 

薬膳マイスター・塚田美奈子さんに聞く

スープのお話。

 

 

目の前に置かれた、白い、スープ。

山芋、生姜、白木耳、白インゲン、鳩麦、

薬草でもある御種人参。

そして、彩りを添える、紅の花。

素材の一つひとつが、私に語りかけてくる。

それは、碗の中で、生きている。

塚田さんのこしらえるスープは、

心と身体に、こっそりと語りかけてくるのだ。

口に入れると、身体と素材が響きあうような感覚。

舌で感じる触覚も、何かを目覚めさせるような。

このひとつの「碗」を通して、塚田さんが伝えたいこと。

ゆっくりと咀嚼しながら、スープに込められた

特別なエッセンスのようなものを、私は感じていた。

 

 

フリーの帽子デザイナーという20年間の華々しいキャリアから一転、

出産を機に、変化が起きた。

常に守るべき存在の誕生は、自身の生き方、考え方を大きく変えることになる。

子供の小児喘息と自らの子宮内膜症をきっかけに

シュタイナー哲学、気功、東洋医学、ホメオパシー、民俗学、舞踊など

幅広く学び、吸収していった。やがて、気功教室を主宰するように。

 

 

そして、縁あって、食の世界にたどり着く。

新潟県十日町市にある、カフェ&ドミトリー「山ノ家」にて

シェフとして、創作料理を担当する。

料理は、特に勉強したわけではなかったが、

持ち前のセンスの良さと、何かを感じ取る「手の力」で

目の前にある素材たちは、素敵な一皿へと生まれ変わる。

「美味しいって、感じてもらうだけで、伝わる。

もう、それだけでいい。もう、これだ―!って思って。

頭で考えることよりも、身体で感じること。

それが一番なのよね」と、塚田さんは言う。

 

 

気持ちがいいか、そうでないか。

全身で、心で感じること。

それは、どんなに言葉で説明しても、頭で理解できることではない。

「知る」よりも、「感じる」こと。

それには、多くを語るよりも、

まず、「これを食べてみて!」と、

一皿を差し出す方が、すっと、伝わる。

 

 

新潟では、食を通して、

徐々に地元の人たちとの繋がりが生まれて来たという。

「地元の人は、既に目の前にあるものの価値に気づいていないことも多くて。

あー、こんな食べ方があったんだ、と驚かれてね。」

食材は、ちょっと山を歩けば、そこに溢れている。

山という食の宝庫から

どうやって、料理を生み出していくか。

採りたてのクレソンをペーストにして、パスタにする。

それだけで、人が集まる。美味しいものを求めて。

次第に、人と食材が集まるようになる。

「農家さん達が、食材を持ってきてくれるようになって。

どんな料理の仕方があるの?使って、って。

そこから、素材の活かし方を考えていくのが、また楽しくてね」

 

 

二年間の宝物のような、経験。

今、新潟から東京の地に戻り、新たな試みを始めた。

心と身体のバランスを、それぞれに合うようにデザインすること。

薬膳のスープを飲みながら、

ゆっくりと話をして、心と身体に向き合ってもらう。

スープは、「自分の身体で感じてもらう」ための

なくてはならない会話のツールなのだ。

だからこそ、そこには、たくさんのメッセージが詰まっている。

「自分の身体に聞いてごらん」と。

 

 

人に触れる。

少し手を当てれば、おおよそ、身体のどの部分が不調か

分かってしまう、塚田さんの「手」。

その手には、生き方が表れていて

とても素敵だった。

きっと、平坦な道などなく、これまでの色々なことを

乗り越えて、感じ取って、人生を丁寧に歩んできたのだろう。

その手からうまれてくるスープは、

これまでの人生のひとつの「答え」でもある。

 

取材・文 小川敦子

 

塚田さん

塚田美奈子

薬膳マイスター、創作料理研究家。

会津、炭問屋の次女として生まれる。幼少期は、山仕事、畑、田、味噌作りなどの手伝いをして育つ。気功歴17年、下北沢で気功教室「自然、サウダージ」を7年間主宰指導。文化服装学院出身。20年間フリーの帽子デザイナーとして活躍した一方、娘の小児喘息と自らの子宮内膜症をきっかけに、シュタイナー哲学や気功、東洋医学、ホメオパシーなどを幅広く学ぶようになる。2012年より新潟県十日町市のカフェ&ドミトリー「山ノ家」にて8月までシェフとして勤務。地の食材を利用した創作料理を探求しながら、豆・麹づくりワークショップ、地域のお母さんのための指編み講座などに携わる。人を楽しく、喜んでもらうことを目的にしている。

 

Information

食と体のデザイン術

薬膳スープ、気功のワークショップを毎月開催。

来年一月からは、料理教室を開催する予定。

問い合わせ先:minako0202@gmail.com

 

○  スープは、秋の「白いスープ」。干しえびやスルメイカで出汁を取ったスープは見た目よりも濃厚。身体がぽかぽかと温まる。