NIWA MAGAZINE

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幸せを食べる 文/小川敦子

taste

小さいとき、遠くの海辺の町に住む祖母の家を訪れる度、いつも祖母が作ってくれた、思い出の味がある。それは、ひき肉がたっぷりと入った、じゃがいものコロッケ。毎年、夏になると、日本海の透明な海で遊んでいた。祖母が早起きして作ってくれた、コロッケ入りのお弁当を持って。揚げたてで、ほくほくしていて、甘くて美味しいその味は、今でもずっと覚えている。たくさんの愛情が詰まった味。朝から晩まで、台所から離れることのなかった祖母と、一度も海で一緒に遊んだことはなかったけれど。
祖母は、一度やると決めたことは、ものすごく集中して、わき目もふらずにやる人だった。モツ鍋をつくる名人を決定する地域の大会で優勝したことがあり、大会の前、祖父や叔母は、毎日モツ鍋だけをひたすら食べなくてはならなかったそうだ。

誰かを想って、ちゃんと作るご飯は、その気持が食べる側に伝わる。そこから、笑顔が生まれてくる。大切な人たちと、テーブルを囲む幸せ。
こころを込めた料理こそ、幸せな日々を送る糧になる。