NIWA MAGAZINE

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食と人 vol.1 文/矢沢路恵

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たまたま落ちて来た星屑を拾い、飛び石をとぶように毎日を生きているのかもしれない、と思う事がときたまある。素材や料理との出会いは、突然にやってくる。どうすれば美味しいものを食べていけるか、という意地にも似た根性で常に生きている。嗅覚のはたらくカンと運の強さは、だれよりも自慢出来ることだ。

 

 

ときに、地方の料理は心を揺さぶる。
地形があり、気候があり、歴史があり、名産がある。
先人の知恵と、生活の工夫、時を越えた美を目の当たりにする。

 

 

先日、金沢で美しいと思うものに出会った。町並みも勿論のこと、魚や野菜、米、酒、菓子。何を見ても目に鮮やかに映り、何を食べても舌が震えた。美しいと思ったのは、そこに住む人々の日常だった。

 

雪のしんしんと降る凍えそうになるような寒さの中、小さな居酒屋で食べた鮭の粕汁が忘れられない。煮込んでほろほろに透き通ったいちょう切りの大根、箸でさがすまでもなくお椀にごろごろ入った鮭のあら、ほどよい味噌と酒粕の甘さ。最後の一滴まで惜しむようにすすった粕汁。北陸の冬の日常に、長い歴史と生活の断片をここに感じた。

 

 

美味しいという言葉は、確かに美しい味であることには変わりない。

何をもって美しいと言えるのか、定義があるわけでもなく、

ただそこに存在する日常にこそ美の姿を垣間みた。

 

 

日常という生きる事に対するしたたかさ、出来うる限り美味しいものを食べたいと思う貪欲さ。そんなことを考えながら、前掛けの紐をきゅっと締め、今日も食堂に立つ。

 

 

写真は、金沢産椎茸と加能蟹のがんもどき(山食堂にて)

精進料理で肉の代用品としてつくられ、椎茸、木耳、人参、銀杏などの具材を大和芋のすりおろしをつなぎに使い、水切りした木綿豆腐にあわせ、油で揚げたもの。関西では飛竜頭・ひろうすと呼ばれ、金沢の郷土料理でもある。木耳が鳥の雁(ガン)の飛んでいる様子に似ているため、「雁擬き」と呼ばれる。※がんもどきの名前の由来には諸説有り。山食堂ではタネに塩少々、卵黄、加能蟹のほぐし身を加え、今回の金沢訪問で得た印象の元、オリジナルで調理したがんもどき。

 

 

 

矢沢路恵

都内数カ所の飲食店でサービスの仕事に従事した後、2014年より料理人であるパートナーの山谷知生とともに、山食堂を前店主より受け継ぐ。飲食店は生産者と消費者をつなぐ役割という考えで、全国各地に生産者をめぐる旅をしながら、日本の地域に伝わる特産を探索する。

 

山食堂

山食堂

完全に家庭料理の店(海のものもございます。)
〒135-0022
東京都江東区三好2-11-6桜ビル1A
電話・FAX 03-6240-3953

都営大江戸線・半蔵門線 清澄白河駅下車 徒歩3分程
深川江戸資料館近く
昼=12時〜15時 夜17時半〜21時半 ※不定休

fbページ
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