NIWA MAGAZINE

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食と人 vol.11 文/矢沢路恵

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角館駅に到着すると、雪がしんしんと降っていた。駅前の旅館「やまや」に入り重い荷物をおろすと、一階にある食堂で名物の稲庭うどんを注文する。あたたかいにゅうめんのような稲庭うどんは、白くてうすべったい、のどごしのつるっとした味わいだった。今年も秋田に来た喜びと、一年に一度だけ会える人達。目の前にある幸せを感じながら、あつあつのうどんをすすった。

 

10歳の頃から20歳になるまで、毎年、年越しは秋田の角館で過ごした。うまれた土地でもなく、親戚がいるわけでもないのだが、私達家族はこの地にすっかり惚れ込んでしまい、ここへ来るのを毎年楽しみに一年を頑張った。

 

たざわこ芸術村と呼ばれるその地は、宿泊施設、劇場、温泉、地ビール園などがある複合施設、母の友人の同級生が働いているとのことで、母の友人家族と、母と私で向かい、ある年の正月をその地で過ごすことにした。

 

むかしは秋田に新幹線が通っていなかったので、盛岡で乗り換え、角館まで電車にゆられて行ったのだった。角館に降りると真っ白い雪が目の前にとびこんでくる。雪国、そのものだった。

 

秋田、という地がなんなのか全く知らなかった。何となく遠い場所、という認識の小学5年生の頃。東京生まれ、東京育ちの私には、雪そのものが新鮮だった。秋田の年越しは、なまはげがやってきて、雪のかまくらの中にろうそくをたて、道なりにぽわんとやわらかいあかりが灯る。夜の雪の風景はしんとして、はるか遠くまで静寂が続く。毎年この時期になると、いつまでもそのことを思い出す。

 

かけがえのない友達も出会えた。親戚でも無い土地に、幼なじみもできた。赤ん坊の頃から可愛がっていた子の結婚式にも参列し、大切な人を亡くした。ここで生活している人達は、みんなどこか遠くからやってきて、この地に惚れ込んで、ここで生きている。遠く離れていても、いつもその秋田の友人たちのことを想う。

 

特に、こんなに寒い風が吹いている今日のような日は。

 

 

 

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写真は、鰹、醬油、みりんで味付けしたつゆに、舞茸、しめじ、えのき、青菜を入れ、茹でた稲庭うどんとあわせ、にゅうめんに。夏はつるつるしたのどごしの、冷たい麺も美味。

 

秋田の稲庭うどん
舞茸や芹の根っこ、比内地鶏で煮込んだきりたんぽ鍋や、じゅんさい、畑のキャビアと呼ばれるとんぶり、春には山菜が名物だが、角館駅を降りると食堂「やまや」であつあつをすすった稲庭うどんがなつかしい。秋田でしか売っていない切り落としの徳用1kgを購入し、ひとりで山盛り茹でてぺろり。地元の方おすすめの「佐藤養助」のかんざし付きがお気に入り。
https://www.sato-yoske.co.jp/shopping/

 

たざわこ芸術村
「株式会社わらび座」が運営する、わらび劇場、温泉ゆぽぽ、田沢湖ビール、森林工芸館などの宿泊形複合施設。修学旅行生の受け入れや、夏、冬と大きなイベントを体験できる。「親父さん」と呼ばれた創始者の原太郎さんが、日本の伝統芸能を後の世代にも伝えるため、全国各地を探し歩き、白樺の自生する自然が残された秋田、角館に拠点をかまえた。1951年創立。数々の名作を、全国、海外とも年に数多く公演している。
http://www.warabi.or.jp/

 

 

矢沢路恵
都内数カ所の飲食店でサービスの仕事に従事した後、2014年より料理人であるパートナーの山谷知生とともに、山食堂を前店主より受け継ぐ。飲食店は生産者と消費者をつなぐ役割という考えで、全国各地に生産者をめぐる旅をしながら、日本の地域に伝わる特産を探索する。

 

山食堂

 

山食堂
完全に家庭料理の店(海のものもございます。)
〒135-0022
東京都江東区三好2-11-6桜ビル1A
電話・FAX 03-6240-3953
都営大江戸線・半蔵門線 清澄白河駅下車 徒歩3分程 深川江戸資料館近く
昼=12時〜14時 夜=17時半〜21時 ※不定休
fbページ
https://www.facebook.com/pages/山食堂/398470866947958