NIWA MAGAZINE

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食と人 vol.16 文/矢沢路恵

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“ 友ははや いずこを行かむ 雲の峰 ”

 

母の四十九日に、母の生涯の友が詠んだ句である。その友も、一年半前にこの世を去った。私の母親のような人だった。母の亡き後、気を落としていた私に俳句をすすめてくれた人でもあった。路に咲いている花、月のかたち、旬の魚、野菜や果物、めくるめく季節を言葉に綴り、悲しみがいつの日か、五・七・五の句の中に溶け込んで消えて行った。

 

歳時記を日常的に持ち歩き、目についたものを記録してゆく。季語を折り込むのは簡単だが、大体が説明的な句になったり、一辺倒な面白味のないものになったり、知識や感覚を研ぎ澄ませなければ、思い通りにいかないものであった。苦労して絞り出しても、それは「言葉」であり、人として内面から滲み出るものは、日々感じている人間らしさそのものである。

 

母が亡くなったのは六月の梅雨入り前、陽の照りつける暑い日だった。白瓜の雷干しが料理屋の軒先にみえる頃、ああ、夏も近くなったと感じる日本の風景を思い出す。螺旋状に吊り下がる、黄緑色がくるくると揺れる。

 

遠い記憶や思い出、かつて見た風景や味。写真やインターネットなど無い時代にはあった、季語をおりまぜた十七音の言葉の世界。想像力の極地に、今宵は何を詠おうか。

 

 

“ 軒先に 揺れる白瓜 母の影 ”

 

*

 

写真は、白瓜の雷干しとこんにゃくの白和え
干し椎茸を戻し甘辛く焚いたものと、白瓜の雷干し、豆腐と醬油・練り胡麻をあわせた衣と合える。

 

●白瓜の雷干し
瓜を小口から螺旋状に長く続けて切り、しんなりするまで塩水につけてから軒先などに吊り下げて干す。酢の物や白和え、また、鰹節と和えてそのまま食す。螺旋状に長く足れている姿が雷に似ている、コリコリと食べたときの音が雷に似ているのでこの名がついたなど諸説あり。

 

 

矢沢路恵
都内数カ所の飲食店でサービスの仕事に従事した後、2014年より料理人であるパートナーの山谷知生とともに、山食堂を前店主より受け継ぐ。飲食店は生産者と消費者をつなぐ役割という考えで、全国各地に生産者をめぐる旅をしながら、日本の地域に伝わる特産を探索する。

 

 

山食堂

山食堂

完全に家庭料理の店(海のものもございます。)
〒135-0022
東京都江東区三好2-11-6桜ビル1A
電話・FAX 03-6240-3953

都営大江戸線・半蔵門線 清澄白河駅下車 徒歩3分程 深川江戸資料館近く
昼=12時〜14時 夜=17時半〜21時 ※不定休
https://www.facebook.com/pages/山食堂/398470866947958