NIWA MAGAZINE

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食と人 vol.27 文/矢沢路恵

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三年前の5月の終わり、梅田で過ごした一週間の間に、梅雨入り前の暑い6月がやってきていた。大阪へ来たら、どうしても行きたい場所があった。吹田市にある万博記念公園である。十数年前、何も調べずにふらりと寄ってしまい、到着した時にはすでに入園時間を過ぎており、門の手前からあの太陽の塔を眺めていた。

 

あの塔の裏はどうなっているのだろうと想いを巡らし、いつかまた来るぞと誓ってから10年ほど経っていた。モノレールの窓から見える太陽の塔は、緑の樹林からそのてっぺんの部分がひょっこり顔をだしていた。遠くからどんどん近づくその塔の頭を眺め、ああ、やっと来たのだと何度も心の中で頷いた。

 

麦わら帽子をかぶり、白い麻のシャツを羽織ってきたが、梅雨入り前の6月は日差しが強く照らし、体に刺さる光線がものすごく暑い。数十メートル歩いては木陰で風を待って涼み、なかなか前へ進まなかった。暑過ぎて思考能力が衰え、あれだけ心待ちにしていた太陽の塔の前へ来ても、木陰で休む方を選んでいた。

 

しかし、せっかく来たのだから公園内を散策しようと奥へ歩いていくと、さすがに広い敷地内だけあり、大きなグラウンドにもの凄い数の人々がテントを貼り、野外で何かのイベントをしていた。さらに奥へすすむとバラ園があり、ちょうど時季である赤や白のバラが見事であった。なんせ、野外である。もういいかげん建物の中へ入りたいという想いが強くなり、なんだかわかないが看板に矢印の書いてある建物の方角へ向かった。

 

とても大きな建物の前には「国立民族学博物館」と書いてある。たまたまここへ辿り着いたが、面白そうなのと冷房がきいているので迷わず入館。中にはいろんな国のお面や装飾品が壁や天井の上の見えない箇所まで隙間無く展示されている。ある国の木製のボートや祭りの衣装、世界中の仮面、魔除け、屋台、伝統工芸、刺繍、織物、模様、人形、アジア、ヨーロッパ、もちろん日本の伝統的な文化や生活にまつわる様々なもの。これだけの資料やものが集まった博物館は他にみたことがない。後に知ることになるこの通称「みんぱく」は、国内でもとても有名な博物館だった。知らなかったことに後悔の念でいっぱいである。

 

 

時間が経つのも忘れてしまうほど永遠に居座ってながめていたい魅惑的なところだったが、さすがに日も暮れてしまう時刻、いつかまた来ようとみんぱくにさよならした。そのまたすぐ隣に「大阪日本民芸館」があり、藍と白の骨董品の蕎麦猪口展が開催されていた。数百、数千点の蕎麦猪口が並び、江戸前期、中期、後期の絵柄やその時代に流行の模様が描かれていた。ああ、これは間違いなく閉館時間ぎりぎりまで居てしまうこと間違いない、名残惜しいが休みの日の最後に是非行きたい場所があったので後ろ髪をひかれつつ、万博記念公園を後にした。

 

 

東京へ帰る迄に、関西のワインバーに行ってみたかった。友人のおすすめで訪ねていったその店は、どこにでもあるような店ではなく、しっかりと地元に根付いた雰囲気のよいワインバーだった。薄暗い店内、ポワンと灯りがともるランプシェード、店中にワインの入った木箱や段ボール箱が積み重なっており、どっしりとした木のテーブル、全てかたちのちがう、ヨーロッパの教会にあるような素敵な椅子に腰掛けた。感じの良い店主の男性がでてきて、白ワインを飲みたいことと、泉州の水茄子と淡路島の玉葱がもしあれば食べたいことを伝えた。わかりました、と奥へ入ってから、とても長い時間が過ぎたように思う。

 

メニューにない、特別につくってもらったその料理は、泉州の水茄子と淡路島の玉葱、トマトやユキノシタ、色とりどりの野菜が入ったさっぱりとしたマリネだった。まさしく今の気分で食べたい味と、オーダーした白ワインにぴったりの料理、東京ではあまりお目にかかれない野菜などを堪能出来たうえに、余計な事は口にしない誠意を感じる店主の男性に、大切な事を教えてもらった気がした。

 

 

住んでいる場所や、生まれ育った故郷、ここが大好きなのだと本当に心の底から言えるだろうか。この地を愛しているというのは皆が口に出さずとも当たり前のことであり、少なくとも私が大阪で過ごした一週間のうちに出会った全ての人々が、そう思っているに違いないと思った。

 

 

旅人を癒し、地元を愛し、最高のおもてなしの心で迎えてくれる。改めて自分の飲食業という仕事を考えるきっかけとなり、いつも6月が来るとそのことを想う。

 

 

写真は、泉州の水茄子と新玉葱・ディルのマリネ

噛み締める毎に、口の中でジューシィーな水茄子のエキスが広がる。淡路島の玉葱の甘さと旨味、関西の人は口を揃えて美味しいでしょ、と言う。自分の住んでいる地域の特産物を、自信をもって美味しいと言える西の人々は日本人の誇りだ。水茄子と新玉葱は好みの大きさに切る。(時季なので大きめにごろごろカットした方が、甘さもジューシィーさも楽しめる。)ラディッシュのスライスとディル、粒マスタードとにんにく油と塩・胡椒、レモンをきゅっと絞り、軽くまぜあわせる。

 

 

 

●コウトーク

6月20日(月)19:30〜22:30
清澄白河駅A3出口より徒歩1分清洲寮1F・gift_lab GARAGEにて
定員40名 2,000円(ドリンクorフードチケット1枚付き)
毎回4人のゲストスピーカーが登場し清澄白河を語る、月に一度開催のトークイベント。第6回目の今回は山食堂・矢沢路恵として、山食堂のある清澄白河について語る。第二部はゲストスピーカーと参加者の交流を促すパーティ。

チケット・詳細は以下のサイトより
http://peatix.com/event/172477

 

矢沢路恵
都内数カ所の飲食店でサービスの仕事に従事した後、2014年より料理人であるパートナーの山谷知生とともに、山食堂を前店主より受け継ぐ。飲食店は生産者と消費者をつなぐ役割という考えで、全国各地に生産者をめぐる旅をしながら、日本の地域に伝わる特産を探索する。

 

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山食堂  完全に家庭料理の店(海のものもございます。)
〒135-0022 東京都江東区三好2-11-6桜ビル1A 電話・FAX 03-6240-3953

都営大江戸線・東京メトロ半蔵門線 清澄白河駅下車 徒歩3分程
深川江戸資料館通り沿い・深川江戸資料館斜め向かい側交差点より五軒目

平日・夜=17時半〜21時半(ご予約優先)
土日祝・昼=12時〜売り切れ迄 夜=17時半〜21時半(夜はご予約優先)
※不定休

https://www.facebook.com/pages/山食堂/398470866947958