NIWA MAGAZINE

  1. exnibition
  2. trip

食と人 vol.34 文/矢沢路恵

image001

 

好きなことを仕事にする。美しい言葉に思えて、それがどれだけ大変なことか。日々生活をして、家族がいて、やるべきことがある。その毎日の中で、自分の好きなこと、やりたいことはどれだけ出来るのだろう。無いもので嘆くより、無いなりに出来ることを考える。その答えが、どれだけ人の心を穏やかにするだろう。好きなことを仕事にするその人の姿は、内に秘めたその強ささえ、気持ちのよい方向へ流れていく。

 

 

私達が山食堂を先代より受け継ぐことになる少し前に、この街に近藤幸子さんという料理研究家が住んでいるということを知人に教えてもらった。主宰している「おいしい週末」という料理教室は、季節の料理に加え、オリジナルのレシピ、人をお招きする際の提案や気持ちのよい空間づくり、試食の楽しい時間を過ごせる人気の料理教室。宮城出身の幸子先生は、以前、仙台の料理教室で講師をしており、十数年前に清澄白河へ越してきた。小学生の頃から料理が好きで、大学時代に管理栄養士の資格を取得、料理の仕事をしようと決めたのだという。

 

 

季節は数年前の2月のことだった。私は山食堂で昼も夜も休み無く働き、右肩の痛みがおさまらなくなった。過労の末の神経痛だった。仕事が好きでたまらなかったが、体の痛みには全く気付かなかった自分にお達しがきたのだと思った。思い切って昼の営業を辞めたとき、どうしようもなくもどかしい気持ちになった。この職業の性なのか、何かをしていないと気が済まない。休む程、次第に働きたい欲にかられ、人は更にその上の欲で出来ているのだと自分の貪欲さに呆れてしまった。

 

 

普段は店の営業時間とかぶってしまうため目にする事が無かった、おいしい週末の料理教室へのお知らせが届き、途端に何か楽しい事をしたい!と気持ちが高揚し、すぐ予約したので、いつも人気で埋まってしまう枠に入る事が出来た。2月のメニューは、ビーツを使った赤い色が鮮やかなボルシチ、春菊とベーコンのサラダ、キャロットラペ、金柑のコンポート、バレンタインも近く、おつまみにもなりそうなアマンドショコラ、花見のときに活躍するソーセージと春野菜のケーク・サレ。

 

 

デモンストレーションをしている時の幸子先生の話し方は淡々としていて親しみ易さも心地よく、くいしんぼうの境地へと誘ってくれた。旅と音楽が好きな幸子先生の料理はひとつの国にとどまらず、その季節毎に食べる美味しい国の料理など、とてもバラエティ豊かである。

 

 

好きな料理を仕事にしている幸子先生でも、私生活では二児の母で、日々の暮らしでさえも忙しく過ごし、余裕をもっていられないこともあるという。丁寧に過ごさなくてはいけない、というのは誰が決めたのだろうか。時間をかけて料理することも日々を快適に過ごす事も理想ではあるが、現実的にそれが出来ないことも多くある。その中で、時間に余裕がないのなら、ないなりの工夫をすれば良いのだと次第に思うようになったのだと。こうあるべき、と追求した生活は気持ちの上でも窮屈になる。

 

 

思い切って手を抜こう!と考えた幸子先生の料理は、重ねて蒸し煮する調理法のレシピへ行き着いた。同じ手間なら作り置きのようなストック料理ではなく、その日、そのときの旬の素材を使い、鍋ひとつで短時間のうちに調理出来、家族との時間も大切にしながら出来る夢のような、理想的な仕上がり。手間はかけないけれど、たくさんの工夫が生かされ、食べることが大好きで、毎日頑張っているみなさんのお役に立てたらうれしいです、と幸子先生の言葉。

 

 

こうありたい、と思う事はたくさんある。しかし、そのことにとらわれ過ぎて気持ちのよい方向へ行けないのだとしたら、そこにどんな意味があるのだろう。日々の暮らしを大切に思う人だからこそ、小さな幸せを見つける事が出来るのではないだろうか。

 

 

 

白子と冬野菜のグラタン

先日、幸子先生のご自宅でマカロニグラタンと季節の料理を頂く冬のお楽しみ企画が。シンプルなだけに、ごまかしのきかない料理。家庭料理ではおなじみのグラタンを「ごちそう料理」にするべく研究を重ねた幸子先生のグラタンは、人をしあわせにするグラタンだった。※幸子先生のマカロニグラタンのレシピは、「おいしい週末、だれか来る日のごちそう献立」地球丸、16ページにて掲載。

 

バターで小麦粉を炒め、あたためた牛乳を入れよく混ぜ、ホワイトソースをつくる。塩、胡椒、醬油で味を付け、茹でた白子とブロッコリー、ロマネスコ、芽キャベツ、百合根、葱を炒めたものとホワイトソースを混ぜて、バターを塗った耐熱皿に入れ、チーズとパン粉をのせオーブンで焼く。

 

●近藤幸子(こんどうさちこ)

料理研究家、管理栄養士。宮城出身で仙台の料理学校、料理教室研究家のアシスタントを経て独立。自身で主宰する「おいしい週末」をスタート。2004年より東京・清澄白河に拠点を移し、おいしい週末・料理教室を営む傍ら雑誌への寄稿、料理のレシピを研究中。著書に「重ねて煮るからおいしいレシピ」主婦と生活社、「おいしい週末、だれか来る日のごちそう献立」地球丸、など。

おいしい週末web   http://oishisyumatsu.com

 

●暮らしとおしゃれの編集室

日々のことや、料理教室のこと、故郷である宮城の風景のこと。
一週間に渡り書かれた、心にすっとなじむ近藤幸子さんのコラム。

http://kurashi-to-oshare.jp/food/17805/

 

 

矢沢路恵
都内数カ所の飲食店でサービスの仕事に従事した後、2014年より料理人であるパートナーの山谷知生とともに、山食堂を前店主より受け継ぐ。飲食店は生産者と消費者をつなぐ役割という考えで、全国各地に生産者をめぐる旅をしながら、日本の地域に伝わる特産を探索する

 

 

image003

山食堂  完全に家庭料理の店(海のものもございます。)

〒135-0022 東京都江東区三好2-11-6桜ビル1A    電話・FAX 03-6240-3953

1A SAKURA Bldg,2-11-6 MIYOSHI,KOTO,Tokyo,Japan 135-0022

Phone Number:#81 3-6240-3953

都営大江戸線・東京メトロ半蔵門線 清澄白河駅下車 徒歩3分程
深川江戸資料館通り沿い・深川江戸資料館斜め向かい側交差点より五軒目

平日・夜=17時半〜21時半(ご予約優先)
土日祝・昼=12時〜売り切れ迄 夜=17時半〜21時半(夜はご予約優先) ※不定休

Open Weekdays  Dinner 5:30pm to 9:00pm *Prioritygiven to reservation
Open Weekend&Holidays  Lunch 12:00pm to Sold out Dinner 5:30pm to 9:00pm
*No fixed holidays

https://www.facebook.com/pages/山食堂/398470866947958