NIWA MAGAZINE

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食と人 vol.35 文/矢沢路恵

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時とともに、形は変わっていく。形を変えて歴史をつくり、人も変わっていく。成長するものもあれば、衰退していくものもある。歴史は変わらない。形はなくとも、人の心に残っていく。

 

2011年3月11日を境に、人は変わった。少なくとも私自身が変わった。多くの事を考え、多くの人に出会った。考えているからこそ行動し、人と出会ったのだ。何も無いところから、何かを求めて彷徨ったのは私だけではないはずだ。

ただ、被災地の為に何かしたいという想いは、縁のない三陸で手探り状態でのスタートとなった。

 

「何かをしたい」というのは、漠然としたものだった。正直なところ被災地の為に何かをするというのは、自己満足にしかすぎないとも思っていた。私ひとりのエゴの為に多くの人を巻き込んでいいのだろうか、より迷惑になるのかもしれない。数えきれないほどの不安はたくさんあった。しかし、考えているだけで時ばかり過ぎてゆく。行動しないのは何もしていないのと同じだと思い、311の震災より二年が経とうとしていた2月、はじめて三陸の地を踏んだ。

 

当時、仙台のとある場所に「アルフィオーレ」というイタリアンレストランがあった。その店のシェフである目黒さんを知ったのは、東京都内で行われたチャリティイベントだった。都内数カ所の飲食店で飲んだワインの売り上げ金を、被災地の小学校へ炊き出しに行かれていた目黒さんへの義援金として募るもので、直接支援しに行っているという感触こそ無かったが、これが誰かの支援につながっていると思えたことが自分の気持ちを前進させた。

 

まだ現地のライフラインも完全に復旧していない中で、昼は炊き出し、夜はご自分の店で料理をし、避難所にいる人々の食を支えた目黒さんは、その後も被災地の食材を使用した料理の通信販売をはじめ、多くの方がそれを注文し現地の食にまつわる仕事を支えた。当初、商品を購入した際に、被災した名取地区にあった養豚場の「ありが豚(トン)」の自家製ソーセージを送っていただいた。同封された手紙には目黒さんの字で「山食堂の為なら出来うる事は何でもします。」と書き添えてあった。何度その文字を見て泣いただろうか。これまでの想いが救われた気がした。

 

(2000頭の豚が津波で流され、数日後、地域の人がヘンゼルとグレーテルのように、あそこの豚さんだろうと路沿いにお菓子をまき、60数頭が養豚場のあった場所まで歩いて戻って来た。もう一度やってみようと、ありが豚の高橋さんはいまでもずっと豚を育て続けている。山食堂へ送っていただいている豚は、いっぱいの想いをつないでいる。)

 

2013年2月震災から二年後、雪がちらちらと舞う仙台、やっとの想いでアルフィオーレの目黒さんに会いに行った。店内の窓から外を眺め、小高い丘の上にある店のテラスには自家製の生ハムがたくさんぶら下がっていた。県内産の小麦を使った自家製パスタ、寒い地方の保存食であるキャベツを瓶に詰めたシュークルート、繊細な味の貝のスープ。この大地と海のある地元産の食材を、どれだけ愛しているのか沁み入るように伝わってくる。

 

「何かをしたい」という想いだけで、知らない私に教えてくれた人もいた。迷っている私を連れ出してくれた人もいた。急ぐのは結果ではなく、その一歩を踏み出せるかどうか。何かをしてあげる、という気持ちはいつしか無くなっていた。与えるのではなく、寄り添うのだ。その地域に人に、前でも後ろでもなく、隣りにそっと寄り添って同じ方向を見つめる。目黒さんに会えてそのことに気付いた。

 

まだそんなことしている人がいるのか、と笑う人もいる。何を言われたっていい。その人を変えることは出来ないが、私自身は変わる事が出来る。歴史は変わらないのだ。この想いと誰かの想いが震えたのだ。ありのままを刻んで、形はなくとも、人の心に残っていく。

 

*

 

写真は、ありが豚(トン)の塩豚と春キャベツの蒸し煮

 

豚の肩ロース塊に強めに塩をすり込み、2〜3日置く。生姜、葱の青い部分、香味野菜などと一緒に塊のまま茹でる。柔らかくなったら、茹で汁ごと冷ます。冷めたら食べ易い大きさにスライスし、キャベツ、芽キャベツ、プチヴェールと一緒に茹で汁を入れて蒸し煮にする。お好みでかんずりを添えていただく。
 

 
●目黒浩敬

2005年より仙台市にイタリア料理店・AL FIOREを開店、2015年秋にレストランを閉じて、川崎町へと移住。食に対して、より広域で活動を続けながら、秋保でのワイン研修、ブドウの栽培をしている。2017年夏に開催される石巻男鹿半島を中心とした音楽、食、アートの総合祭、Reborn-Art-Festival(リボーンアート・フェスティバル)で食部門のFood Directorとして参加予定。

 

写真/岩澤修平

器・山プレート(角)/飛松弘隆

 

 

【山食堂 チャリティバザー】

2017年 3月22日(水)より
2017年 3月31日(金)まで
14時より16時まで 山食堂にて

※17:30からの通常営業時間も一部商品をご覧になれます。
(満席の際は店内にてご覧になれない場合もございます。ご了承くださいませ。)
 
●山食堂とご近所のお店の方々とのチャリティバザーです。被災地でカーシェアリングをされている吉沢武彦さんの団体への寄付金を募ります。
(一般社団法人 日本カーシェアリング協会
)

●被災地の食材の販売と、雑貨、衣類(子供服含)、器、調理用具、書籍、布ものなど不要品の販売、日替わりで出店者が掘り出し物を持参し参加致します。
●マイバッグ、小銭をご持参下さいませ。(現金のみ、カード不可。)

●小さな喫茶スペース有り。(店内ご飲食のみ。)ラストオーダー15分前
※バザー期間中、山食堂では昼営業をお休み致します。ご近所の飲食店、おいしい店がたくさんありますのでそちらを是非ご利用下さいませ。

 

 
矢沢路恵
都内数カ所の飲食店でサービスの仕事に従事した後、2014年より料理人であるパートナーの山谷知生とともに、山食堂を前店主より受け継ぐ。飲食店は生産者と消費者をつなぐ役割という考えで、全国各地に生産者をめぐる旅をしながら、日本の地域に伝わる特産を探索する
 

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山食堂  完全に家庭料理の店(海のものもございます。)

〒135-0022 東京都江東区三好2-11-6桜ビル1A    電話・FAX 03-6240-3953

1A SAKURA Bldg,2-11-6 MIYOSHI,KOTO,Tokyo,Japan 135-0022

Phone Number:#81 3-6240-3953

都営大江戸線・東京メトロ半蔵門線 清澄白河駅下車 徒歩3分程
深川江戸資料館通り沿い・深川江戸資料館斜め向かい側交差点より五軒目

平日・夜=17時半〜21時半(ご予約優先)
土日祝・昼=12時〜売り切れ迄 夜=17時半〜21時半(夜はご予約優先) ※不定休

Open Weekdays  Dinner 5:30pm to 9:00pm *Prioritygiven to reservation
Open Weekend&Holidays  Lunch 12:00pm to Sold out Dinner 5:30pm to 9:00pm
*No fixed holidays

https://www.facebook.com/pages/山食堂/398470866947958