NIWA MAGAZINE

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食と人 vol.39 文/矢沢路恵

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そういう風に生きたいからそうしているのではなく、そういう風にしか生きられないのだ。器用に生きている人なんているのだろうか。その都度、壁にぶちあたって考えて一歩ずつ進んで行く。不器用にしか生きられない。そういう風にしか生きられないから、そうやって生きている。

 

高校時代の友人に数十年振りに再会したら、お互いたいして変わっていない事に驚いた。そのまま制服着て学校行ってもおかしくないね、と笑いあった。性格もあの頃と変わらない。好きな食べ物も、色も、相手を思いやる気持ちも、趣味も、得意な事も。自分の性格の好きなところも嫌なところも、そういう風に生きたいんじゃない。そういう風にしか生きられないから、そうやって生きている。

 

高校時代の仲間のひとりが、この夏に亡くなった。急なことで、驚いた。そのとき私は石巻に居て、リボーンアートフェスティバルの最終日、中瀬の盆踊り会場でNHKの密着取材を受けていた。東京に居る仲間から連絡をもらい、驚いて悲しくて、その気持ちをどこにやる事も出来なかった。すぐ東京に帰ることも出来ず、仲間とも電話も出来ない状況で、いまはただひとりになって泣きたかった。

 

打ち上げ会場から抜け出て、中瀬の川の風に吹かれて夜の街を眺めていた。もがいても苦しくても、他人にはわからないことだ。自分の思い出の中の友人を、ずっと思い浮かべていた。仲間と再会出来たのは、その友人が引き合わせてくれたおかげだと思っている。ずっと会えなかった時間を埋めるように、懐かしい話しに花が咲いた。

 

山食堂を受け継いでから丸4年が経とうとしている。この店で働いて良かったと、日々思う。仲間との再会もそのひとつのストーリー、毎日この店でたくさんのドラマがあった。常連さんの赤ちゃんが産まれたこと、年に3回も台湾から来てくれるお客さん、祭りに誘ってくれた街の人たち、チャリティバザーをした近所のお店の仲間、いろいろな偶然が重なり石巻へ行った事、また石巻まで来てくれた街の仲間たち。深川ヒトトナリでの忘れられない経験、出会い。誰かのお祝いの度に集まって飲んだこと。大きな家族のように、ことあるごとに肩を寄せあい、朝まで話し続けた。楽しいときも悲しいときも、この店は酸いも甘いも知っている。

 

こういう店にしたいなどまるでなく、店はただのひとつの箱であると思っている。その箱の中にお客さんが行き交い、風を通してくれる。自分が思っている店の像なんて、ちっぽけなものだ。こんなにたくさんの人が風を通してくれるなんて、それだけで充分じゃないか。不器用ながらに、また一歩、今日も一歩とそうやって生きていく。

 

私とは、そんな生き方しか出来ない。そんな生き方でいいのだと、今年も山食堂の席をいつもいっぱいにしてくれた沢山の人に言われているような気がした。不器用だっていい。そういう風にしか生きられない。私達に出来る事は、目の前にいるお客様を大事にすることだけ、と先代の言葉が身にしみる。年の暮れにそんなことを思った。

 

 

鰤大根(ぶりだいこん)

寒波が押し寄せるこの季節だからこそ、美味しくなる食材がある。ストーブと湯気と、お燗酒と酒の肴。気のおけない仲間と、久しぶりに会う家族と、テーブルを囲むお客様の笑顔を想像しながら、この店でどんなドラマがうまれるのだろうと今宵の料理と酒を考えるのである。

鰤は水洗いして、三枚に卸す。頭と中骨、尾の身を食べやすい大きさに切り霜降りして、残った鱗や血合いを洗う。大根は皮を剥き面取りして下茹でする。鍋に鰤と水、酒、昆布を入れ、火にかけ沸いたらアクをとる。大根、生姜の薄切り、砂糖、味醂、醬油を加え中火で煮る。味を整え、青菜を入れ温まったら器に盛り、柚子を添える。

 

 

 

矢沢路恵
都内数カ所の飲食店でサービスの仕事に従事した後、2014年より料理人であるパートナーの山谷知生とともに、山食堂を前店主より受け継ぐ。飲食店は生産者と消費者をつなぐ役割という考えで、全国各地に生産者をめぐる旅をしながら、日本の地域に伝わる特産を探索する。

 

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山食堂  やましょくどう yamashokudo

〒135-0022 東京都江東区三好2-11-6桜ビル1A    電話・FAX 03-6240-3953

1A SAKURA Bldg,2-11-6 MIYOSHI,KOTO,Tokyo,Japan 135-0022

Phone Number:#81 3-6240-3953

都営大江戸線・東京メトロ半蔵門線 清澄白河駅下車 徒歩3分程
深川江戸資料館通り沿い・深川江戸資料館斜め向かい側交差点より五軒目

 

夜=17時半〜21時半(ご予約優先)不定休

Dinner 5:30pm to 9:00pm *Prioritygiven to reservation *No fixed holidays

https://www.facebook.com/yamashokudo/

 

※2017年・年内は12月30日まで、2018年・年始は元旦より営業致します。