NIWA MAGAZINE

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食と人 vol.43 文/矢沢路恵

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震災前より、何度も行こうとした場所があった。福島のあんざい果樹園。その桃を初めて食べた時は衝撃が走り、りんごジュースを口にした瞬間、脳が覚醒した。本能がこの桃を欲して止まず、剥いた桃を数人で静かに食べていたのがいつしか無言の奪い合いになり、一箱分の桃はあっという間に無くなっていた。

 

震災後、まだ行った事のないあんざい果樹園はどうしているのだろうかと遠くより思った。その後、風の便りで事情や近況は耳にしていた。行って直接お会いしてみたいが、如何なる場合でも今何をどうすればいいのか、福島へ行く理由をずっと考えていた。福島へのアプローチはまた、震災後とてもシビアだった。あれからもう7年も経ってしまった。

 

仕事でもない、旅でもない、友人が住んでいるわけでもなく、知っている土地もどこもない。あれから何年も想っていた福島とご縁が出来たのは、他の誰でもなく、あんざいさんからのお声掛けがあったからだった。それまでに何度も山食堂へ食事に来てくださった。たくさんお話ししたわけではないが、心の中でつながっている事を感じた。

 

一年前、石巻へ行く前にあんざい果樹園内にある器のお店「utsuwa gallery あんざい」の25周年についてお話しを伺った。当時は敷地内でカフェも営業していて、週末になると行列が出来る程の人気だった。震災以降、福島に人を呼ぶ事を躊躇っていたという。あんざいさんから「震災後」という言葉が何度も出てきた。一緒に住んでいたふたりの息子家族は、福島を離れた。夫婦ふたりだけになってしまった後、一年間は毎日泣いて暮らしたという。そんな事ばかりしていても何も変わらないといっそ好きな事をしようと暮らしていたら、みるみるうちに元気になった。スキーの資格も持っており、大好きなスキーをしにフランスまで行った。果樹園の向かいにある吾妻山が望める素敵なお庭ではミュージシャンを呼んでライブもした。食べる事も、人と集まる事も、楽しいことも大好き。好奇心をいっぱい抱え、目がキラキラと輝いてる。

 

 

6月に開催されるutsuwa galleryあんざい25周年記念の席で、山食堂の料理を提供する事になった。打ち合わせを兼ねて、はじめてあんざい果樹園にお邪魔した。福島での時間は、どれもが美しかった。山に続く道、梨の花、東北の凛とした食材に、穏やかな酒の味、そして優しい人々。ずっと来たかったこの場所に、いま私はやってきた。

 

この地方ではいつもどんなものを食べているのか気になっていた。とりわけ福島の食材については知識が無く、食卓に並ぶ家庭料理はなかなか人の家にお邪魔しないと食べられない。翌日の朝ご飯に自家製の梅干しが出てきた。ものすごく真っ赤でつやつやしており、なんだこれはとびっくりするほどジューシィ。この地方では梅を一度茹でてから梅干しにするのだとか。赤紫蘇と塩を多めに入れるので、真っ赤で塩っぱく、艶のある真紅色に仕上がる。皿に残ったその梅のエキスを梅醤番茶に入れていただいた。夫婦ふたりだけでは毎日食べても食べきれないというので、甕に入っていた3年ものの梅干しを全て頂戴してきた。自家製のがんもどきや豚肉の煮物に入れると、塩っぱい梅干しの味と絡んでいい塩梅になる。

 

 

私達は同じ空気を吸って生きている。同じ国のものを食べ、つながっている土地の水を飲んで生きる。雨が降り、山から流れた水が川へ辿り、海へ届く。その海で獲れたものを食べ、山で育ったものを口にする。知らない土地に興味があり、知らなかった人々と触れ合って生きる。知らなかった福島、離れていてもこの地の先で同じものを食べて生きている。

 

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「utsuwa gallery あんざい」25周年ワンプレート

鱒の三五八焼き

目光の南蛮漬け

凍み大根とじゃが芋煮

あんざい果樹園梅干しの焼きがんも

胡瓜と茗荷の漬物

いか人参とほうれん草のナムル

おからのトマト煮

木の子と山菜の玉子焼き

しその実のおむすび

油揚げと布海苔の味噌汁

※三五八漬けは福島の郷土料理。塩・米麹・米を3:5:8の割合で混ぜ、食材に漬け込む。

いか人参、凍み大根、油揚げや豆腐なども山間の東北地方の食材ならでは。

器/松原竜馬・角田淳

写真/萬田康文

 

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松原竜馬 . 角田 淳 二人展

[うつわと 花と 食と]

2018年6月9日[土] ~ 6月17日[日]

1:00 ー 17:00 会期中無休

 

2011年の震災の年に個展を行う予定だった松原竜馬さん。角田淳さんご夫妻。7年の月日を経て、25周年を迎える記念すべきこの機会に、お二人のご協力のもとようやく開催を叶えることができました。25年のこれまでには大きな転機が何度かありました。それでもここまで続けることができたのは、足を運んで下さったお客様、そして日頃からお世話になっている方々のお陰です。この場をお借りして心より感謝申し上げます。

 

 

[うつわと花と食と]

期間中は様々なイベントやワークショップを企画しております。松原さんのあたたかみのある陶器。角田さんのキリッとした美しさのある磁気。お二人の素敵な器を使って、東京.清澄白河にある人気料理店[山食堂]さんにはランチプレートを。NHK趣味ドキ、雑誌LEEなどでも活躍中のフラワースタイリスト。平井かずみさんには、お花のワークショップをお願いしました。また いずれも用意するお菓子は札幌の[たべるとくらしの研究所]安斎明子さんが担当。その他の日程もいつも支えてくれている皆さんが美味しく楽しい時間をご用意して下さいます。

 

 

『期間中イベントスケジュール』

作家在廊 9.10.11日の3日間

6/9 [土] 山食堂25周年ランチプレート2500円

(たべるとくらの研究所のお茶とお菓子付き)

* 無くなり次第終了

 

6/10[日] 山食堂25周年ランチプレート

(たべるとくらしの研究所お茶とお菓子付き)

* 無くなり次第終了

 

平井かずみワークショップ[花摘みと花しつらいの会]PM2:00~4:30 定員10名

参加費¥8800円(予約制)

(たべるとくらしの研究所お茶お菓子付き)

6/12[火]&13 [水] 展示のみ

6/14[木] tea Room Co Iine (紅茶とおお菓子)

6/15[金] 展示のみ

6/16[土] 土日の二日間

6/17[日] 藁谷 志穂 ランチカレープレレート無くなり次第終了

 

PLAYTIME CAFE

手ほぐし足ほぐしセラピー

ホロスコープリーデング

 

*山食堂さんのランチプーレートも予約受付ています。

木々の緑、お庭の花々も美しい季節。どうぞお誘い合わせの上、ぜひ遊びにいらして下さい。

☆お問い合わせ、ご予約はutsuwa gallery安斎までtel(024 591 1064)でお願いします。

 

 

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矢沢路恵
都内数カ所の飲食店でサービスの仕事に従事した後、2014年より料理人であるパートナーの山谷知生とともに、山食堂を前店主より受け継ぐ。飲食店は生産者と消費者をつなぐ役割という考えで、全国各地に生産者をめぐる旅をしながら、日本の地域に伝わる特産を探索する。

山食堂  やましょくどう yamashokudo

〒135-0022 東京都江東区三好2-11-6桜ビル1A    電話・FAX 03-6240-3953

1A SAKURA Bldg,2-11-6 MIYOSHI,KOTO,Tokyo,Japan 135-0022

Phone Number:#81 3-6240-3953

都営大江戸線・東京メトロ半蔵門線 清澄白河駅下車 徒歩3分程
深川江戸資料館通り沿い・深川江戸資料館斜め向かい側交差点より五軒目

 

 

夜=17時半〜21時半(ご予約優先)不定休

Dinner 5:30pm to 9:00pm *Prioritygiven to reservation *No fixed holidays

https://www.facebook.com/yamashokudo/