NIWA MAGAZINE

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食と人 vol.47 文/矢沢路恵

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学生の頃に行った京都は、20年以上経った今でも想い出深い。学生といってもハタチを過ぎてからの、大人だけど学生の頃。修学旅行とは違う京都、友人と歩いた道を思い出しながら更に大人になってから歩く。

 

修学旅行の頃に歩いた京都は、ほとんど覚えていない。歴史も地理もろくに勉強していなかった私は、どこを歩いたかさえも思い出せない。金閣寺だか銀閣寺だかの渋い絵が描かれた徳利とお猪口のセットを父のお土産に買った事を何となく覚えている。

 

その時の自分にとって、それぞれの違った見え方があるはずだ。当たり前に経験値が増えたとしても、覚えているのはいつも20代の時の京都だった。

 

20年前の学生時代、服飾専門学校の友人と格安ツアーを探して貧乏旅行をした。交通費・宿泊費ともにひとり2万円程のツアーだった。行きたい場所がひとつあっただけで後は何も決めておらず、ついでにお金も無かった為、友人とパンをかじりながら夜の鴨川で用も無く、ただ時間の過ぎるのだけを待っていた。

 

座っているだけなのに、次から次へと若い男性ふたり組に声をかけられた。あやしいので私達に次々と断られた若い男性ふたり組は、他の女性ふたり組に次から次へと声をかけている。よく見たら夜の鴨川のほとりは若い女性ふたり組ばかり。ここは夜になると若い男性と女性の出会いの場所だという事を知った。何も知らず夜の鴨川で黄昏ていたのが、その時ばかりはいままでに無いほど人気者だった。そのうち、また若い男性ふたり組に声をかけられた。また断ろうかと思っていたら「僕たち◯◯の人間なんです。車出すんでどこか行きませんか?」と、会社名を出されそこの人間だと言い、某大手の国産車の会社の名刺を差し出された。東京から来ているんだったら、車でしか行けない場所に観光で連れて行ってあげますよ、と。暇な私達は断る理由もなく、そのふたり組について行った。

 

先ず、車は嵐山へ。夜でよく見えなかったが、竹林の道が続くあの有名な場所。いかにも京都という場所で、私達は途端に観光気分で歓声をあげた。その近くの山の上から望めるのは、遠くに見える京の街の夜景だった。キラキラと綺麗な夜の京都。さっきまであそこでパンを食べていたとは思えなかった。そこから更にどう行ったのかは覚えていないが、昔の伝説である勇士が鬼の首を捕らえて持ち帰ったところ、急に重くなって持ち上がらなくなり首を埋めたという首塚があるという。そして、その近くに建設途中でとある事情により放置され廃墟化したホテルが心霊スポットとなり、若い男女が多く訪れる場所に行こうと向かった。

 

車を降りると街灯や灯りが全く無いので思っていたよりも相当暗く、携帯電話の明かりを頼りに皆で寄り添って山を登った。廃墟化したホテルは怖い以外の何ものでもなく、きゃーきゃー言うどころか恐怖で声も出ない。首塚には、若い男女が手を繋ぐなど甘っちょろい可愛いものなど何も無い。それぞれが前に歩く人のシャツの背中を握り締めるようにぎゅっと掴み、怖さの絶頂で一秒と眼を開けていられなかった。

 

車に駆け込み、山を下り美味しいうどん屋に連れて行ってもらった。夜、ポツンと一軒のみ営業していたうどん屋だったように思う。立ち喰いだったが、男性が多く店内は賑わっていた。たぬきうどんを注文したが、関東の天かすとは違い、刻みお揚げがのったうどんだった。どうしてもこれはきつねうどんだと言い張り、定員と喧嘩になりそうになった。誰に聞いてもこれはたぬきだと言うので、仕方なく刻んだお揚げのうどんを不思議に思いながら食べた。帰りは泊まっている宿まで車で送ってくれて、今夜は寂しい僕たちに付き合ってくれてありがとう、とさり気なく言い残し、これが京都のおもてなしなのだと良いように感心した。友人といい旅だったねぇ、とまた何もすることが無い私達に戻った。

 

関東と関西のうどんの違いを後に知り、たぬきだきつねだと京都のうどん屋で散々言い放った自分を恥じた。何年経っても、京都に何度来ても、20年前のあの時の京都を思い出す。

 

————— 【油揚げと九条葱の玉子とじ】 京都は水があまく、どの店に入っても味がやわらかい。お揚げを刻んだものに九条葱がのり、玉子でとじたうどんは最高だった。日常的に食べられている優しい味。 油揚げを油抜きし、適当な太さに切る。 出汁とみりんと薄口醤油のつゆで油揚げを煮て、沸いてきたら九条葱を切ったものを入れ溶き卵でとじる。お好みで黒七味をそえて。

 

矢沢路恵
都内数カ所の飲食店でサービスの仕事に従事した後、2014年より料理人であるパートナーの山谷知生とともに、山食堂を前店主より受け継ぐ。飲食店は生産者と消費者をつなぐ役割という考えで、全国各地に生産者をめぐる旅をしながら、日本の地域に伝わる特産を探索する。

 

山食堂  やましょくどう yamashokudo

〒135-0022 東京都江東区三好2-11-6桜ビル1A    電話・FAX 03-6240-3953

1A SAKURA Bldg,2-11-6 MIYOSHI,KOTO,Tokyo,Japan 135-0022

Phone Number:#81 3-6240-3953

都営大江戸線・東京メトロ半蔵門線 清澄白河駅下車 徒歩3分程
深川江戸資料館通り沿い・深川江戸資料館斜め向かい側交差点より五軒目

夜=17時半〜21時半(ご予約優先)不定休

Dinner 5:30pm to 9:00pm *Prioritygiven to reservation *No fixed holidays

https://www.facebook.com/yamashokudo/