NIWA MAGAZINE

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食と人 vol.5 文/矢沢路恵

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偶然出会ったものと共に、常に生きている。自分の行く先にあるものを、信じて疑わない。そしてそれを選んだ事に、後悔はない。

 

山梨の奥地、津金の葡萄畑へ見学に行く様になり、すぐそばにある歴史資料館の方たちと仲良くなった。明治学校と呼ばれるその建物(現:津金学校)は、明治時代はその通り学校だった。いまはその当時の建物そのままに、歴史資料館として残されている。一階にある素敵な空間は、教室をカフェにした明治カフェ。葡萄畑を見学した後は、いつもここへ寄るのがおきまりになった。

 

何度か通うようになったある日、その年の夏、この場所で開催されるイベントに参加してみませんか、とお声をかけていただいた。むかし小学校だったこの場所で、地元の小学生たちと3人の先生がちょっと風変わりなが授業をする「津金一日学校」という企画。迷う事無く、よろこんで参加することにした。

 

私の担当は、給食をつくるボランティアスタッフだった。地域の方々と一緒に地元の食材でこどもたちの給食をつくることは、私にとっては非日常の出来事。いつかは住んでみたいと思っていた津金の地で、こんなに楽しい事は他にないと思った。葡萄畑と滞在する時間の割合が変わってきたとき、この場所に葡萄畑を見に来たのか、津金学校に来たのかわからなくなっていた。

 

翌年も第二回目の「津金一日学校」が開催されることになった。もちろん、迷わず参加させていただくことにした。ただ、いつも交通手段で使っている新宿からの高速バスが夏のハイシーズンでチケットがとれず、仕方なく特急電車を乗り換え、現地に向う事にした。長坂駅で下車、タクシーを使って歴史資料館へ行く前に駅に隣接する野菜の直売所があった。いつもは高速バスで過ぎてしまうその場所、その駅にはじめて降り立った。そうか、この辺りは駅に野菜の直売所があるのだということに気付いた。地域の方は当たり前の風景でも、都会に住む私にとっては、駅に野菜が売っているなんてことは日常ではない。

 

そこに並んでいる野菜の中で、ひときわ目立つ野菜があった。黄緑色のひょうたんのかたち、つるつるとつやがあり、ぷっくり膨らんだ白丸茄子。袋には「BIO FARM にじ畑」とシールが貼ってある。その素敵な野菜に心を奪われた。白丸茄子がふたつ入った袋を買い、東京に戻り早速焼いて食べてみた。

 

口に入れた瞬間、驚いた。焼いた茄子のエキスが旨味に変わり、まるでスープのようにじゅるじゅるとあふれてくる。全身を刺激する茄子の美味しさ。思わず、その勢いで生産者のにじ畑さんに電話した。電話の向こうは、かわいい女性の声。そして、この女性こそがにじ畑のヨディこと、依田真樹子さんであった。

 

白丸茄子があまりにも美味しかったので、山食堂用に野菜をおまかせで一箱お願いすることにした。にじ畑より届いたその野菜たちは、なんと美しく綺麗なことか。彩り豊かで、西洋野菜もたくさん種類があり、店で使わせてもらうには、ありがたかった。そして、この美味しさで、手頃な価格。彼女曰く、無農薬野菜とはいえ金額を高く設定してしまっては多くの方に手にとってもらうことが出来ず、この世に無農薬野菜が広まっていかない。

 

所謂「こだわり」というものは、その人が好きにやっていることだ。それがよいとか悪いとか、そんな野暮な事は言わない。世界でいちばんのものを集めようと思わないだけ。日常的ではないことに、意味は感じない。「多くの方に手にとってもらわないと意味がない。」ヨディのその言葉に、脳が完全に支配されてしまった。

 

翌年の津金一日学校も、第三回目が開催されることとなった。津金に来るようになったご縁で知り合ったにじ畑の野菜で是非、給食をつくりたかった。一緒に参加しませんか?との問いに、是非!とヨディからのお返事。うれしかった。

 

津金一日学校の給食はもう三回目にもなるが、こどもたちに給食をつくるという、多きな難題がある。飲食店というものはよく考えたら、お金を払ってくれる「大人」へ食事を提供していることになる。こどもにあわせた食事をつくるということは、どんなことなのか、改めて考えさせられるきっかけとなった。

 

つくるのはいいが、食べ残してほしくない。しかも、にじ畑の美味しい野菜を。小学一年生から六年生まで、体の大きさも食べる量も本当にバラバラだ。食べるのがはやい子もいれば、遅い子もいる。好きなものも嫌いなものも、家庭環境も性格だってみんな違う。どんな風にしたらよいか?考えた末、好きなものを選べるバイキングにすることにした。そして、こどもたちに3つの約束を提案した。

 

ひとつめ、好きなものを選ぶこと。
ふたつめ、それを自分で食べる量を決めること。
みっつめ、選んで決めたものを、残さないと守ること。

 

私は先生ではなく、給食のボランティアスタッフのうちのひとり。先生ではないので授業というかたちではないが、こどもたちが自分で選んだことに、責任を持ってもらいたかった。この物がありふれた世の中で、残すということはいけないことなのだと知ってほしかった。

 

地元の食材をつかい、みんなで美味しいものをつくった自信はあったが、正直、給食の食べ残しがどれくらいあるか心配だった。教室の片付けを終え給食室に戻ると、ボランティアスタッフのみんなが「これ矢沢さんにみせるまでみんなに捨てないでって言ってたの!」とみせてくれたもの。とうもろこしの芯と西瓜の皮の山だった。最初にそれをみたとき、なんのことやらと思った。数秒おいてそれが給食の残りの全てだと気付いたときには、自分の目から涙がぼろぼろこぼれた。

 

偶然はとなりあわせでつながっている。思いもしない石がどこからか飛んで来て、たまたまくっついて今がある。ありふれたものが彷徨っている世の中で、正しいものを決めていくのは自分次第なのだ。こどもたちと約束した言葉は、自分へとつながっていた。選んで、決めて、残さない。

 

今年、4年目を迎える津金一日学校が開催される。にじ畑のヨディの野菜とともに、地元の食材でつくった給食が学校に彩られ、授業開始の鐘が津金に鳴り響く。

 

 

写真は、BIO FARM にじ畑 ズッキーニのトマト煮

鍋にオリーブオイルと潰したにんにくをいれ香りを出し、サイの目の玉葱、人参を入れ炒めたあと、黄色と緑のズッキーニを適当な大きさにカットしたものを加え、よく炒める。皮を剥いたトマト(もしくはホールトマト缶)を鍋に投入。塩、バジルペーストを加え、トマトからでてきた水分がなくなるまで炒め、塩と胡椒で味を整える。冷製にしてパンとあわせていただいてもよいが、出来立てを玄米ごはんと一緒に頬張るのも好き。

 

★2013年度の津金一日学校で作った給食の「夏野菜のラタトゥイユ」より引用。にじ畑のズッキーニで料理したもの。※白丸茄子の時季は8月の終わり〜9月くらいまで。(昨年の給食でバイキング用に料理した17種類のうち、7種類をレシピガイドとして作成した「給食だより」。津金学校と山食堂で販売中。)

 

 

BIO FARM にじ畑

農薬や化学合成肥料をつかわずに育てた、「おいしい」にこだわり元気いっぱいの自然のちからをたくさんあびたお野菜。宅配お任せ便 ¥2,500-(お野菜¥2,000分+送料¥500)季節によって内容が変わり、旬の野菜が届きます。何が届くかお楽しみに。2014年7月27日の津金一日学校にも参加予定。

 

 

津金一日学校

明治8年に建てられた木造校舎、津金学校。今は使われなくなってしまった学校が夏の1日だけ、小学校として開校。この日、この場所でしか受けられない3人の先生の授業。いつかこどもがおとなになろうとする時、いろんな生き方があるって思い出せるような、この日だけの特別な学校。
こどもたちは授業を受け、その様子を大人が授業参観という形で見るという風変わりなイベント。

 

ディレクション/豊嶋秀樹(gm projects)企画運営/NPO法人文化資源活用協会・津金学校 2014年7月27日開催決定

 

申込み受付は6月21日(土)~7月15日(火)、WEB、もしくは会場の「津金学校」にて受付。申込み期間中、津金学校の2Fでは「一日学校展」を開催中。※山食堂は店舗の営業があるため、今年は不参加。

 

 

 

矢沢路恵

都内数カ所の飲食店でサービスの仕事に従事した後、2014年より料理人であるパートナーの山谷知生とともに、山食堂を前店主より受け継ぐ。飲食店は生産者と消費者をつなぐ役割という考えで、全国各地に生産者をめぐる旅をしながら、日本の地域に伝わる特産を探索する。

 

山食堂

 

 

山食堂

完全に家庭料理の店(海のものもございます。)
〒135-0022
東京都江東区三好2-11-6桜ビル1A
電話・FAX 03-6240-3953

都営大江戸線・半蔵門線 清澄白河駅下車 徒歩3分程
深川江戸資料館近く
昼=12時〜15時 夜17時半〜21時半 ※不定休

fbページ
https://www.facebook.com/pages/山食堂/398470866947958