NIWA MAGAZINE

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食と人 vol.50 文/矢沢路恵

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食と人 vol.50

 

ある蜂蜜石鹸の会社の一般人モデルとして、通販番組に出演するやもしれない時があった。そのお話をいただいてから緊張も最高潮に達し、興奮というより不安で眠れず、出演が決まるまでどぎまぎして過ごした。実際には別の方が出演する事になり通販番組デビューは逃したが、内心ホッとしたのが正直なところ。

 

 

テレビの通販番組に出演する為、日頃からすっぴんで過ごしている人を探していたそうで、以前通っていた美容師さんからのご紹介でのことだった。事前に打ち合わせでお会いした蜂蜜石鹸の会社の社長さんと娘さんはさすがに肌艶綺麗で美しく、とてもいい方で沢山お話しをした。テレビ出演のオーディションが決まるまでの間、本当に私で良いのかと何度も悩み、電話で幾度となく相談にのっていただいた。若い頃にした苦労を人の為といろいろアドバイスくださり、女性特有の身体の悩みも質問したりもした。養蜂の会社の社長さんに嫁ぎ、一生涯使いたいと思えるコスメを自身で作った。あまりにも評判が良く、知り合いだけにお裾分けしていたのが餅が一枚のっている肌と絶賛され、蜂蜜をふんだんに使ったコスメを商品化した。是非お試しくださいと頂戴した蜂蜜石鹸の全商品は使い心地も尚更のこと、餅が一枚のっているかのようにもちもち肌とはこの事ぞ。風呂上がりに肌が乾燥することが無い寒い冬を過ごしたのは、はじめてだった。

 

 

私が普段ノーメイクで過ごしているのには理由があった。元々メイクなど興味がなく、緻密な事が苦手、横着者で不器用な上、好きではないものだからいまいち上達しないまま大人になってしまった。自分では普通のつもりが、凄いメイクのままで職場に行って仲間から笑われた事もあった。30歳半ばを過ぎた頃から肌が荒れるようになり(化粧水ですら嫌い)レストランの夜の仕事で暗い灯りの下で働いていたので、尚更メイクしてもしなくてもあまり変わらないようになった。それなら好都合でと化粧品に使うお金を他にまわせた。

 

 

そのうち「男だって化粧していないじゃないか、女だけ化粧しなくちゃいけないなんて不公平だ。」と思うようになり、卑屈になって何かにつけてその言葉を口にするようになってしまい今に至る。多分そんな事思い付いていなければ、いまころ颯爽とメイクして街を歩いているだろう。

 

 

蜂蜜石鹸の会社の社長さんに、眉間に皺が寄っているのは、年相応に見えなくなるので良くないのだと指摘された。社長さんの親戚の方で一年振りにお会いした女性のお話を聞いた。しばらく会っていないそのたった一年の間に、身内の看病で心身ともに疲労がたまり、眉間に皺が寄り、久々に会ったら誰だかわからないほど一気に老けたのだと言う。眉間の皺は人生を物語る。成人を過ぎたら日々の苦労で人相も変わるのだと。

 

 

打ち合わせの為に待ち合わせした場所は、とある都内のホテルのロビーに隣接するカフェだった。ホテル内のレストランより、ここの方が気軽で畏まらず好きなのだと。そして、先日もある方とこのカフェ指定で打ち合わせをしたら、お相手の方がカツサンドと苺シェイクを注文したのだと同じものをオーダーした。このお方はなんて素敵な組み合わせで注文されるのだろうと思ったのだそうで、その話をしてくれるときの社長さんの目がキラキラしていた。70歳手前か、もう少し上か。私と同じ世代のように、学生の頃の友人とお喋りしているかのように楽しかった。お茶目で愛嬌があり、わくわくするような可愛らしさ。はじめてお会いしたのに緊張も解け、友人のようにあれこれ話した。

 

 

型にはめられるのが、むかしから嫌いだった。誰かが決めた事が大嫌い。枠を超えて自分の好きなように生きてきた。自分の好きなように生きてきた事が顔にあらわれる。化粧品の通販番組に出演するやもしれないきっかけから、顔は人生を物語るのだと気付かされた。

 

 

好きなこと嫌いなこと、楽しいとき辛いとき、眉間に皺が寄りそうになる度、いつもあのときの社長さんの可愛らしい笑顔を思い出す。

 

 

***

苺のソルベとジェラート

 

苺は、誰もが好きなフルーツだろう。真っ赤で甘酸っぱくて、見るからに美味しそうな色。ショートケーキにのった苺の列は、わくわくや楽しみがたくさん詰まっていた。蜂蜜石鹸の会社の社長さんのお茶目で可愛らしい姿は、みんなを笑顔にしてくれる苺のようだった。

 

 

鍋に水1kg、てんさい糖1kgを加えて火にかけ、てんさい糖を溶かし30度まで冷ます。水で表面をさっと流した苺を30度に冷ましたシロップの中に入れバーミックスで潰し、レモン汁を加えて半分を冷凍する。半分残った苺シロップ別に少しだけ残し、バニラジェラートと混ぜ合わせ苺のジェラートをつくる。冷凍した苺のソルベとジェラートを半分ずつ器に盛り、残りの苺シロップをかける。苺シロップの真紅色の艶が、魅惑的な誘惑に惹きつけられる。

 

 

矢沢路恵

都内数カ所の飲食店でサービスの仕事に従事した後、2014年より料理人であるパートナーの山谷知生とともに、山食堂を前店主より受け継ぐ。飲食店は生産者と消費者をつなぐ役割という考えで、全国各地に生産者をめぐる旅をしながら、日本の地域に伝わる特産を探索する。

 

 

 

山食堂  やましょくどう yamashokudo

〒135-0022 東京都江東区三好2-11-6桜ビル1A    電話・FAX 03-6240-3953

1A SAKURA Bldg,2-11-6 MIYOSHI,KOTO,Tokyo,Japan 135-0022

Phone Number:#81 3-6240-3953

都営大江戸線・東京メトロ半蔵門線 清澄白河駅下車 徒歩3分程

深川江戸資料館通り沿い・深川江戸資料館斜め向かい側交差点より五軒目

夜=17時半〜21時半(ご予約優先)不定休

Dinner 5:30pm to 9:00pm *Prioritygiven to reservation *No fixed holidays

https://www.facebook.com/yamashokudo/