NIWA MAGAZINE

  1. exnibition
  2. trip

食と人 vol.56 文/矢沢路恵

 

67310471_372710080113455_3188733228361973760_n

 

 

はじめて訪れた遠い地の港町。旅の最後の午後、帰りのフェリーに乗る為、移動距離短縮の手段として小型の舟でフェリー乗り場まで向かった。小さな舟の上で荷物を抱え、仲間と肩を寄せ合い旅の最後を想った。

 

小さな舟は波に揺られ、水しぶきが顔に身体にと跳ねて来た。港の入り組んだ船着場を迂回して、舟は海へと動きだした。じきに太陽が地平線へと落ちる寸前、濃いオレンジ色と赤との間の燃えるように鮮やかな夕焼けが空の風景を彩った。どこからか雲が集まり、自然現象が奏でる美しい絵画のようだった。あまりにも美しく、慌てて写真に収めるべくカメラを取り出そうとしたが、手に持っていたら海に落としてしまいそうな程の大きな波の揺れがくる。この景色を、この目に焼き付けようと、舟に揺られながら真っ赤な空をみていた。

 

この海は夕暮れ時になるとどこからか雲が集まり、その雲が羽の生えた猫の形に変わり、風に乗り海の空を一周する、という伝説があると誰かが言った。運が良ければ空に見えるのだというその現象。次第に雲が集まり、羽の生えた猫が夕暮れ時の空を駆け巡り、海を一周する姿を想像した。雲が羽の生えた猫に変わる瞬間を待っていたが、日は暮れて小さな舟はフェリー乗り場まで到着した。

 

 

全ていつか見た夢の話だ。

思い出す度に夢だったのか、自分のしてきた経験なのか見境がつかなくなってしまう時がある。

 

眠りが浅い時に自分の頭の中に浮かんでくるものだが、見る、という表現がいつも面白いなあと思う。大人になるにつれて、それがハッキリとした映像で鮮明に覚えているのが、不思議だ。経験値が重なるので当たり前の事なのか。

 

お客さんから聞いたポルトガルのお土産話し、石巻で乗せてもらった海鞘漁師の小型船、福島でみた吾妻山の雪うさぎ、中学生の時に乗った伊豆七島行きのフェリー、前橋でみたムットーニの絡繰人形、深川の船宿から釣りに出た大海原。

 

現実にどこかの国である現象だって事も、もしかしたらあるかもしれない。しかし、所詮は私の頭の中の想像。いままで実際に見てきたことの重なり。まるで壮大な映画を観ているかのような、夏の夜の夢だった。

―――――――――――-

杏とさくらんぼ酒のテキーラ・サンセット

 

杏のコンフィチュール、水、テキーラを微量、レモン果汁を混ぜ、氷を入れたグラスに注ぐ。さくらんぼ酒を上から静かに注ぎ、さくらんぼのブランデー漬けの実をひとつのせ、杏のシロップ煮をグラスの淵に飾る。

 

濃いオレンジ色と赤との間の燃えるように鮮やかな夕焼けが空の風景を彩り、雲が羽の生えた猫の形に変わるまでずっと空を見上げていた。いつかそんな事があったのかもしれない。美しく鮮やかな色のついた夢は、現実の見境がつかなくなる程に。

 

 

矢沢路恵

都内数カ所の飲食店でサービスの仕事に従事した後、2014年より料理人であるパートナーの山谷知生とともに、山食堂を前店主より受け継ぐ。飲食店は生産者と消費者をつなぐ役割という考えで、全国各地に生産者をめぐる旅をしながら、日本の地域に伝わる特産を探索する。

 

山食堂  やましょくどう yamashokudo

〒135-0022 東京都江東区三好2-11-6桜ビル1A    電話・FAX 03-6240-3953

1A SAKURA Bldg,2-11-6 MIYOSHI,KOTO,Tokyo,Japan 135-0022

Phone Number:#81 3-6240-3953

都営大江戸線・東京メトロ半蔵門線 清澄白河駅下車 徒歩3分程

深川江戸資料館通り沿い・深川江戸資料館斜め向かい側交差点より五軒目

夜=17時半〜21時半(ご予約優先)不定休

Dinner 5:30pm to 9:00pm *Prioritygiven to reservation *No fixed holidays

https://www.facebook.com/yamashokudo/