NIWA MAGAZINE

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食と人 vol.58 文/矢沢路恵

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フレンチなど、自分の人生において通りすがることも無かった世界に急に飛び込んだ。知らない世界は面白い。発見と驚きと輝き。沢山の先輩方からたくさんの事を学んだ。凝り固まっていた自分の感覚が吹き荒み、新たな探究心が溢れ出して全身を埋め尽くす。

 

以前、入社した会社は環境をテーマにしたレストランだった。その他に総合的なショップを柱とし全ての部門に共通した環境というものを据えて、年明けに新しくオープンする店の準備に各部門と日々ミーティングを重ねている最中だった。年の暮れが押し迫る12月の半ばの事。

 

私の所属していたレストラン部門はシェフがフレンチ出身であり、環境をテーマにしたフレンチレストランというコンセプトだった。国産のオーガニックの食材や、生産者と未来を考え繋がりを持ち、それを体感出来る場所としてこの総合的ショップが誕生する。私の役割はその生産者の取りまとめを取材して文章におさめたり、何よりレストランが出来上がってからの一番大事な仕事は接客、サービスと呼ばれる給仕が主だった。まだレストランが施工中だった為、年内はだいぶ時間に余裕があり、オープン前の調整もコンセプトを固めるといったところだった。その頃シェフが懸念していたのが、私の接客経験不足であった。

 

いままでカフェ、定食屋、居酒屋でしか働いた事の無かった私にフレンチのサービスが務まるかが心配であった。当の私にも未知の世界であった為、何が不安かわからない分、心配する要素すらもわからなかった。以前、私達のオープンするレストランの向かい側に、地域では有名なフレンチレストランがあり、そこのサービスの主任がシェフの知人であった為、お前そこで修行して来いよとシェフの一声で私が一週間だけ研修させてもらえる事となった。

 

シェフと一緒にご挨拶に伺ったところ、ちょうど先日ひとり辞めちゃって人手が足りなくて困っていたのだと逆に御礼を言われ有難くお願いしますと、面接もせずに引き受けてくださった。電話をとってくれるだけでも助かると、クリスマスと年内営業最終日までの死ぬほど忙しい時期に空から神が降ってきたかのような安堵の表情で私は迎え入れられた。

 

いざ店に立つと、料理のフランス語が飛び交った。勿論、右も左もわからない。数字を覚えるだけで一苦労だ。更に、クリスマス当日になると忙しさが加速し、誰も私になんて気を使わない。一年で一番忙しい日に、フレンチレストランに飛び込む事になろうとは、思いもよらなかった。ただ、賄いは最高に美味しいものにありつけた。また、コース料理の味見を出来る良いチャンスだった。毎日必死の思いで研修させてもらい、この12月の暮れの慌ただしさは勉強になり身に付いた。

 

この一週間の間、散々怒られたNシェフにもサービスの方々も、新人どころか偶然にも向かいのレストランから突然やってきたフレンチ未経験の私に良くしてくださった事に感謝である。年内の営業最終日、調理場の大掃除前の食材を整理している際に、調理学校出たての下っ端の料理人の子達に裏に呼ばれた。何かと思えば、冷凍庫を掃除するので、タッパーに入っていた残りのキャラメルアイスをくれたのだ。すぐ溶けちゃうので急いで食べてと。タッパーにスプーンをさして急いで食べたキャラメルアイスは今までの人生で食べた事のない味だった。こんな美味いものが世の中にあるのかと思った。

 

数年後、向かいのフレンチレストランもその場所から去り、私の働いてた職場もクローズした。ある時、都内のワイン試飲会へ行った際、偶然にも向かいのフレンチレストランでお世話になったNシェフに再会した。独立されてご自分の店をオープンしたところだったので、近いうちに伺いますと言った。その時、Nシェフから飛び出した言葉に驚いた。「あんたのことずっと探してたんだよ。」訳を聞くと、Nシェフの新しい店のオープン直前に、サービスのスタッフが急遽辞めてしまったのだと言う。私を探してくれたのだが、数年の間にいくつかの職場を転々としていたので、途中までの店の消息しかわからなかったのだと。連絡先もわからず、私の足取りを辿っていろいろな店を訪ねてくれた事に声も出ない程びっくりした。

 

あの時、全く使いものにならなかったであろうフレンチ未経験の私を覚えていてくださった事に、嬉しさと感動が込み上げた。あんなに怒られて何も出来なかった私の事を、ずっと探してくれていた事実が信じ難かった。きっと見つけ出してくれた時には、Nシェフの店で働いていたのかな、いやいやまたフレンチレストランで怒られるのはどうなのだろうと、違う人生を歩んでいたかもしれないもうひとつの道を想像して、ふふっと笑った。

 

 

 

●島無花果のキャラメルアイス

乳製品こそ入っていないが、無花果の粒々とキャラメルのほろ苦さが絶妙な味。あの時のフレンチレストランの調理場で、タッパーにスプーンを突っ込んで食べさせてもらったキャラメルアイスの贅沢な味を思い出す。鍋に甜菜糖を入れ火にかけ、焦がしキャラメルをつくる。島無花果を皮ごと丸のまま入れ、少しの水を足して5分~10分程煮る。冷めたらバーミックスで混ぜ、冷凍庫で冷やし固める。島無花果のキャラメル煮を添える。

 

 

 

【News:山食堂チャリティ夜バザー&マーケット】

9月27日(金)までの毎週金曜日の夜、山食堂チャリティ夜バザー&マーケットを開催致します。現在、令和元年8月豪雨災害、千葉の台風被害に関して現地で支援活動をされているOPEN JAPAN、日本カーシェアリング協会のボランティア支援金として、バザーの売り上げ金を全額を寄付致します。山食堂・毎週金曜定休日の夜の開催となりますので、料理のご用意は御座いません。お酒やデザートなどご用意致します。買い物がてら夜の山食堂に是非お立ち寄りくださいませ。

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9月27日(金)の夜まで

17:30-21:30(21:00L.O) 毎週金曜日の夜

※マイバッグ、小銭をお持ちくださいませ。

※バザー販売に関する商品の出品物は受付ておりません。何卒ご理解のほどお願い申し上げます。

 

皆様のお越しをお待ちしております。

 

 

矢沢路恵

都内数カ所の飲食店でサービスの仕事に従事した後、2014年より料理人であるパートナーの山谷知生とともに、山食堂を前店主より受け継ぐ。飲食店は生産者と消費者をつなぐ役割という考えで、全国各地に生産者をめぐる旅をしながら、日本の地域に伝わる特産を探索する。

 

山食堂  やましょくどう yamashokudo

〒135-0022 東京都江東区三好2-11-6桜ビル1A    電話・FAX 03-6240-3953

1A SAKURA Bldg,2-11-6 MIYOSHI,KOTO,Tokyo,Japan 135-0022

Phone Number:#81 3-6240-3953

都営大江戸線・東京メトロ半蔵門線 清澄白河駅下車 徒歩3分程

深川江戸資料館通り沿い・深川江戸資料館斜め向かい側交差点より五軒目

夜=17時半〜21時半(ご予約優先)不定休

Dinner 5:30pm to 9:00pm *Prioritygiven to reservation *No fixed holidays

https://www.facebook.com/yamashokudo/