NIWA MAGAZINE

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色を引き出す。表現する。vol.2 文/樋野由紀子

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vol.2 「よもぎ」

 

「緑は黄色に藍の青を重ねないと出ないの。植物単体では出せない色。」と先生の言葉がいつもある。あんなに自然界には緑が溢れていて、おそらく一番目にしているのは緑ではないかと思うのに、緑色の植物ではいわゆる“緑”は出せない。今でも不思議に思う。

 

実家が農家という事もあり、幼い頃から遊び場だった畑や田んぼの畦に当たり前のように生えていて身近な植物、よもぎ。今まで何度かよもぎで染めをしてきた。でもやはり、はっきりとした緑は出なかった。

 

ふと、よもぎ餅を思い出した。よもぎ餅の色こそ、よもぎで染めた糸の色に似ている。湯がいたよもぎをお餅に練り込む。染めも煮出して染液を作り、そこに糸を浸す。熱を加えると鮮やかな緑はたちまち黒を足したような色へと変化する。そこに糸がその色素を吸い込み、独自のよもぎ色が出来上がる。

 

よもぎも春と秋で違ってくる。春のよもぎで染めた糸は明るくて若草を想像させ、清々しい。一方、秋のよもぎで染めた糸は少しダークで、まさしく秋の色、哀愁のある落ち着いた色だ。

 

モスグリーン、青味がかったグレー、オリーブ、苔色…またもや何色と表現し難い色になる。

 

自然界で目にしている植物の色が染色というフィルターを通すとその色は植物そのものの色ではなく、いつもどこかで目にしている山や海や空、畑や庭の日常の風景だったり、幼い頃の思い出、匂いや感触の記憶の中にあったりする。

 

よもぎで染めながら、子供の頃に両親や祖母について畑や田んぼへ行き、遊んでいる最中に砂利道で転んで擦りむいた時、よく近くにあったよもぎを揉んで傷口につけてもらった事を思い出す。そんな事を思いながら、だんだん色づいていく糸を眺め、キラキラとしたそのよもぎ色が愛おしく、ほっと温かい気持ちになっていく。

 

 

樋野由紀子

草木染め染色家・手織り作家

倉敷本染手織研究所で紡ぎ、染め、織りを学んだ後、作家活動を始める。今現在は、出雲の自宅に工房を構えながら、作品の製作を行っている。

 

樋野由紀子 facebook

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