NIWA MAGAZINE

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葉山の夕暮れ

hayama

 

海街独特の空気感と風と光に包まれるこの土地に、いま、どうしても居たかった。

 

関東での最後の暮らしの場として選んだのが、葉山。短い期間ではあるけれど、海が目の前の高台にぽつんと立つ古い家屋のゲストハウスに滞在している。なんというか、これからめまぐるしく変化するだろうという、その前に、静かに自分と向き合う場所が欲しかった。もちろん、東京から2時間以上もかかるし、不便なことも多いし、いいことばかりではないけれど、それでも、やっぱりこの土地で思い耽ってみたり、そういうことがしたかったのだ。

 

とある日曜日。夕暮れ前の時間に、海岸沿いを30分ぐらい、てくてくと歩いていく。崖と言ってもいいぐらい急勾配の丘の上には、大きな家がポツリポツリと立っている。そのゆったりとした道を抜けると、潮の香りが漂う、小さな漁港へ。もう少し先には、海に突き出した小さな神社がある。そんな道を歩いていたら、故・永井宏さんのエッセイを想い出していた。何もないけれど、ここにしかない、何かがある。特別な何か。葉山という土地がもたらす、独特の空気感とハワイに吹く偏西風のような、ふんわりとした風。

 

帽子作家の友人が催していた、小さくもかわいらしい展示会に訪れる。海を眺めながら、ゆっくり友人と話したり、手作りの美味しいケーキとお茶を飲んでお暇する。すっかり夕暮れどきになっていた。この夕暮れの時間帯こそが、最もこの土地が特別だと感じる瞬間でもある。夕日に照らされた海。心の奥底がじんわりと温かくなって、ゆるんでいく。

 

自分自身に還る。それが、ここで得られるものなのかもしれない。

 

 

2015年3月7日