NIWA MAGAZINE

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松江の空

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60年に一度の遷宮。八百万の神様が出雲の地に、一同にお集まりになるという神在月。月を愛でるという展示会のメインテーマに合わせ、この時期に開催することに。

松江に訪れた初日、小春日和のような温かさ。冬が到来したかのような東京の気候に合わせた装いー全身ニットの服に包まれた私を待っていたのは、すこぶる暑いぐらいの日差しとやわらかな風だった。特急八雲に揺られながら、美しい紅葉の山々を眺めていた。

松江の上空は、雲がうごめいている。一度として、同じ空はない。私が好きなのは、特に朝の情景である。澄みきった空気に溢れんばかりの光。雲の隙間に入り込む光の情景は、いつまで見ていても飽きないものだ。

イベントの日が近づくにつれて天気は悪化。聴いたことのないような、ひゅうひゅうという風の音。さすが出雲、と友人たちとささやき合いながら、なんとかイベントを無事に終えた。どんなに雨が降ろうとも、夜には煌煌と光る半月が浮かぶ。

私自身が東京に戻ると決めていたのは11月12日。神様をお迎えするという伝統的な行事がはじまるという日であった。夕方、空には、これまで見たことのない7原色の大きな虹が突然現れた。全身、鳥肌が立つぐらいの感動。その場にいた全員は、一瞬、声を出すのも忘れて、唖然とした表情をしていた。オーナー高橋さんの「ギャラリーの上に上がってください」の一言で、急いで螺旋階段を上がる。そこでは、さらなるサプライズが待っていたのだ。龍神の雲が、ギャラリー正面に佇む甘南備信仰(山自体がご神体として古代から崇められている)の山ー茶臼山の上空をゆっくりと移動していた。やがて、その長くて巨大な雲が消えた瞬間、山の真上には真っ白い半月が浮かんでいた。一瞬の出来事だった。

晴れていたのは、その一瞬で、次の瞬間には、また土砂降りの天気に戻っていた。まるで、夢の中にいたようだ、と皆で言い合い、私は、興奮冷めあらぬまま、松江を後にした。帰りは寝台特急で東京に朝着くことになっていた。ずっと睡眠不足が続いていたので、すぐに寝てしまおうと思って、電気を消して、早々とごろりと横になる。と、夜空を見てみると、満点の星と、虹のような光の輪に包まれた月。ハワイでは、「ムーンレインボー」と言われる月だった。それは、めったに目にすることができない、幻の月とも言われているのだ。そんな情景を前にして、眠れるわけがない。

こんなこと、多分この先も、ずっと私は忘れることはないだろう。

 

2013年11月20日